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過去形 9
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高校どこにするかの時に、俺が立花を追いかける為に勉強を頑張ったこと。
絶対、外国に留学するんだと立花の夢を言われて落ち込んだ二年の冬の事、追いかけられる程凄い自分じゃないのを痛感したこと。
……四日後、立花がいなくなること。
鼻水を啜る音がしたあと、立花は俺から少し離れようと胸板を押してきた。
涙を拭くために目を擦り、立花は涙目で俺を見た。
「なあ、間宮……」
「…なんだ?」
「……今日だけでいいから、…オレの傍にいてくれ」
グッと俺の片腕を掴み、立花は震える声で言った。まだ残っている涙を俺は親指で拭うと、クスリと笑った。
「…立花がいいなら、俺はずっと外国に行くまでお前の傍にいるよ」
「…外国に行っても、絶対離れんな。…オレの事忘れるな……」
「忘れるわけねぇだろ」
俺はそう言って、その場から立った。そして、立花に手を伸ばす。
立花はその手を掴むと、ゆっくりと身体を立たせる。
俺達は何を言うわけでもなく、その場から歩き出した。
隣を歩く立花を見ると、目元を真っ赤に染め上げていた。
「…勝手かもしれないけど、オレの事…待ってて」
「言われなくてもそのつもりだよ」
どちらかともなく静かに手を繋ぎ、桜の道を後にした。
───俺が今日みた夢のようには、ならなかった。
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