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昔話.2
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「なぁ、陽ちゃん。それ、また増えてる」
それ、と翔平が指すのは、俺の頬に増えた青あざ。
週末が明けると必ず指摘されるそれを、俺はそっと手で隠す。
「......別に、元からだし」
「......そっか」
一度否定すれば翔平はしつこくはしない。
お互い子供で、無力なことは分かっていた。
「あ!ランドセル忘れた!!」
「またかよ」
「あー、どうしよ!!」
子犬みたいな瞳で俺にすがる翔平に、いつものごとく冷たくあたる。
「戻れば」
「そんなの遅刻するじゃん!!陽ちゃん見せて!」
翔平は翔平で、いつものように図々しく迫ってくる。
それに俺が折れるのも、いつものことだ。
「たっく、しょうがないな.....」
「よっしゃあ!陽ちゃん大好き!!」
散々な家庭に育つ俺が変な道へ行かないのは、きっと友達からの愛情があるからだ。
翔平のおかげで、多少は楽しい人生になってる。
けど、それももう少しで終わり。
夏休みが始まれば、翔平とは会わない。
そして夏休みが終わる頃、俺はもういない。
「......翔平。ありがとな」
「ん、何?俺なんかした?」
「いや、お前が馬鹿で、見てて愉快になる」
「ひどっ!!」
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