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鈴にい-6
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枕に顔を伏せていても、さっき仲良く振り向いた2人の顔は一向に消えてくれる気配がなかった。
あーあ……。
もう豚まんは蒸し上がって2人で楽しく食べているんだろうか。
今日出掛けたりするんじゃなかった。
出掛けなかったら、今も2人の仲に気付かず平和な気持ちで居れたのに。
――カチャリ。
「!」
テレビを点けていなかったから、ドアノブが回る音はしっかり耳に届いた。
だけど、どんな顔を見せたらいいのかと思案していると控えめな足音が近付いて来た。
「晩里?」
ベッドに俯せになったまま顔を上げるとそこに立っていたのはユタカだった。
「先輩。鈴、あ……寮長がこれ先輩に持っていくようにって」
ユタカが手にしたトレーにはお茶らしきものが入ったマグカップが2つと湯気を立てるほかほかの豚まんが載っていた。
夕飯は結局マックで簡単に済ませたから熱々の豚まんは喉から手が出るほど魅力的だ。
小皿に添えられた酢醤油も食欲を掻き立てる芳香を放っていて、腹の虫が早く早くと急き立てて来る。
今すぐかぶり付きたいけど、先に解決しておかなければならない事がある。
ユタカも何かを察しているのか、トレーをテーブルに置くと床に正座した。
「先輩、俺と……寮長の関係」
「いいよ、知ってる。今日見た」
「見た……って」
明らかに動揺を見せるユタカに今までの疑いが確信に変わる。
「俺も、買い物に行ってたから」
「ごめんなさい……先輩」
謝られても困るというか、謝って貰ってもどうしようもないというか、とにかく謝って欲しいわけではないんだ。
謝るぐらいなら晩里を返して欲しい。
「今まで黙っててすみませんでした。先輩には話しておかなきゃいけないとは思っていたんです。でもどうしても、言えなくて」
ユタカは辛そうに身を縮めて視線を落とした。
あれ? 悪いのってもしかして俺!?
いつから付き合ってるのか知らないけど、後から割り込んだのは自分だ。
晩里も「貴方だけです」と言って相当悪いやつだけど、とにかく自分がユタカの恋人を横取りしたんだ。
「いいよ、俺が身を引くから」
言ってしまった。
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