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his genome-12
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「す、鈴にい……」
何でこんなに早く帰ってきたのか。
鈴にいが手に持っているのは今しがたコンセントから引っこ抜いたコード。
その先をブンブンと回しながら1歩1歩ゆっくりとキリさんに歩み寄っていく鈴にいの背後に炎が見える。
「鈴にい……早かったね……」
ホームセンターに行ってきたにしては早すぎる。
俺の電球は?
俺の事など視界に入っていないとばかりに鈴にいはキリさんを睨み付ける。
「キーリーッ! 何でまたお前がここに居るーっ!!」
鈴にいの剣幕で、キリさんの身体が一瞬ふわっとベッドから浮き上がった。
「まぁたベッドで物を食っただろーっ!!」
動かせぬ証拠がベッドの上に散らばっていて、先に片付けておかなかった事を後悔した。
「ユタカ!」
「は、はぃぃっ!!」
ギンギンに怒りまくった鈴にいの破壊力は絶大で、名前を呼ばれただけで背筋がシャキンと伸びる。
「このちゃらんぽらん男に第5寮の恐ろしさを身をもってわからせてやれ」
「はい?」
何を言っているのかわからないと目で訴えると鈴にいは「罰則だ」と吐き捨てるように言い放った。
何で俺?
罰則なら鈴にいがやればいいのに。
「俺がやったらこいつにとっては罰則にならないからな」
そうでしたね。
この間のキリさんの喜び様を思い出して苦笑いが漏れる。
キリさんの手から取り上げたノズルを俺の手に握らせると鈴にいは俺の背中をバシッと叩いた。
「遠慮は要らないぞ。さあ、思いっきりやってやれ」
スイッチは入れっぱなしになっていたから、抜かれていたコードを鈴にいが差し込んだ途端吸い口がキリさんのTシャツの裾に噛み付いた。
ボフッ、ズォーーーッ。
ノズルを掴んでいる指先から伝わってくる衝撃は想像以上で、ホースを取り落としそうになる。
呆れたように鈴にいが俺の手にノズルを握らせ直す。
「ほら、しっかり持て」
ズォーーーッ、ボボボボボッ。
まだ服の表面しか吸っていないのに罪悪感というか、良心の呵責というかそんな感情が押し寄せてきて手が進まない。
「俺、やっぱり……」
やっぱり無理だ。
いっくら第5寮の寮則だと言っても、キリさんを痛めつけるような真似はしたくない。
「鈴にい!」
「何だ」
ボッ、シュオーッ。
キリさんの服からノズルを引き剥がし、腕組みをして見張っている鈴にいに返却する。
「俺には無理」
「は?」
カチッ、ヒューンッ。
聞こえなかったのかスイッチを切った鈴にいの額で不機嫌度を示す皺が一層深まった。
「何だ」
「俺、無理だから鈴にいがやって」
「だから、俺がやると罰則にならないってさっき言っただろ」
「でも……」
何度も言わせるなと、面倒くさそうに言う鈴にいにキリさんが「晩里がやったらいいじゃん」と合いの手を挟んで余計に怒らせて、最早収拾がつかない。
もうやだよ、このカオスな空間。
俺が居なければ鈴にいがやるだろう。
ヒートアップした二人をチラッと見ると、足音を忍ばせてドアの方へと歩き出した。
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