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春、お見舞い
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目覚まし時計の音以外で目を覚ますのはずいぶん久しぶりだ。熱がまだ多少あるようで体は重たいが、とても良い目覚めだ。毎日こうだったら良いのにな。
昨日、瀬戸とは病院の前で別れた。別れ際の瀬戸の言葉が、頭の中で繰り返される。
「こないだ、連絡先訊くの忘れてた。登録しても良い?」
胸の内側がなんだかムズムズする。自分と同じように、瀬戸も連絡先を交換しなかったのを残念に思っていたのだ。
嬉しい。最初に瀬戸に対して抱いた敵対心や嫉妬は、すでに祐樹の頭からは完全に抜け落ちていた。
あんなにイケメンで、困ったとき助けてくれた。まさに白馬の王子様って感じ。
そんな風に考えてしまうと、何故かそわそわした。そのそわそわをどこにやればいいのか分からずに、布団に潜ったりそこから顔を出したりを繰り返した。
何がしたいんだ、自分。そしてお前は乙女か。
完璧超人と友達になり助けてもらったことで、自分が瀬戸を除く人類の頂点に立った気分になる。早く会いたい。また話したい。
枕元に置いてあったスマートフォンがブルブル震えた。何かしらのメッセージが届いたのだろう。枕の横に手を伸ばす。
開いてみると瀬戸からだった。
『家どの辺?母の実家から果物たくさん届いたんで、風にも効くだろうし持っていこうかなと思ったんだけど。』
慌てて飛び起きる。
部屋を見回すが、特に散らかってはいない。普段からまめに片付けていて良かった。
いや、待て待て。瀬戸は部屋に入るって言った訳じゃない。もしかしたら果物届けて帰るだけかもしれないし、そもそも風邪を移してもこまるし…。
とりあえず返信するか、と再び携帯を手にとった。
『まじで!待ってる』
送信してしまってから後悔した。
これでは瀬戸に会いたくてたまらない(もしくは果物が食べたくてしょうがない)子供みたいだ。
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