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それを大佐の手に渡すと得意気にキュッと目を細める。
「キレイでしょう? 僕が見つけた貝殻の中で一番気に入ってるやつだよ。あなたにあげる」
淡いオレンジ色をした巻き貝だ。
大佐はそれを光に透かすと、角度を変えながらしげしげと眺めた。
つるりとした滑らかな曲線には傷ひとつなく、小ぶりだがよい形をしている。
どことなくリオに似ている気がした。
「ありがとう。気に入っているのに、いいのかい?」
「うん!」
「大切にする……」
大佐はうっとりと目を閉じると、そっと貝殻に唇を寄せた。
それを見ていた王子様は思わずポッと頬を赤らめてしまう。
「(よかった。ソウゲツ、元気になった)」
どうやら贈り物を気に入ってくれたようだ。
小さいながらも不思議と親近感の湧くこの貝殻は、本当のことを言うと王子様は自分の宝物にするつもりだった。
けれど、やめた。
沖から戻ってきた大佐のこちらを見つめるすがるような眼差しを受けた瞬間に、どうしてもこの人にあげたいと思ったのだ。
火星にいる母上に見せたら、きっと頭を撫でて誉めてくれたに違いない。
でも今は、誰よりも彼の喜ぶ顔が見たかったのだ。
*****
大佐はひとしきり貝殻を楽しむと、サングラスのクロスにそれを包んで大事そうにケースに収めた。
王子様はその様子を名残惜しそうに見つめている。
「しまっちゃうの......?」
「なくしたら大変だからな」
大佐はそう言うと、今度はいそいそとテントの入り口のファスナーを閉めてしまった。王子様はビックリする。
まさかもう着替えるつもり?
「イヤだっ! 僕、まだここにいたいっ!」
「何を勘違いしてるんだ?」
大佐はクスクスと笑い声を上げた。
そのまま逞しい右手を床につくと、あろうことかフワリと上に覆い被さってきたではないか。
「待たせたな。貝殻の次は君の番だよ」
「ソ、ソウゲツ......?」
「ここに書いてある。キスしてほしいって......」
そのまま頬に落とされたのは恋人用の甘い口づけ......。
思いもかけない大佐の行動に、王子様は早くもクラリとなった。
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