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那智side
「ねぇ、悠里遅くない?」
「あの服だし、手間取ってるんじゃないか?」
男のトイレなんて、たかだか一分もあれば済むだろう。だけど、悠里はなかなか戻ってこなかった。
藤の言葉に納得し、そこからもう数分経ったけど、待てども待てどもドアが開くことはなかった。
これはさすがに、おかしいんじゃないのか?
「…ちょっと見てくる」
そう思ったのは俺だけではなかったようで、恭哉がソファから立ち上がった。
「俺もいく」
俺もそう言うと、結局全員が立ち上がり、五人で探しにいくことになった。
悠里と別れた場所に戻る。そこから近いトイレは三つだ。
俺と藤、ミチルと紫乃、そして恭哉で別れて、手分けして探すことなった。
俺と藤が探すことになったのはここから一番近いトイレで、恭哉達と別れてすぐに着いた。けれど誰もいない。
「ハズレか…」
「…みたいだな。とりあえず、恭哉んとこに行こう」
恭哉は一人だったから、そちらに向かうことに決めた。少し近くなったところで、派手な物音が響いてきた。
「おいっ、今の…!!」
「ああ、急ぐぞ!」
全速力で物音がした方へ向かうと、着いたのはやはり恭哉が向かったトイレだった。
「恭哉!悠里!!」
…どうなってんだ?目に入ったのは、手を洗う広いスペースに清水が這いつくばっていて、それを完全にキレた顔の恭哉が見下ろしているところだった。
怯えた顔で必死に地面を這って逃げようとする清水に、恭哉が無言で蹴りを入れる。
バケモノみたいに喧嘩の強い恭哉の蹴りを受けて、平気な人間がいるわけなかった。
その場で清水は嘔吐し、過呼吸を繰り返している。
「おい!恭哉!どうなってんだよ!!」
「個室の一番奥に悠里がいる。気を失ってるから保健室まで運んでくれ」
「なっ…!!」
大急ぎで個室に行くと、グッタリした様子の悠里が壁にもたれかきって座り込んでいた。
「おいっ、悠里大丈夫か?!しっかりしろ!!」
「那智落ち着け、脈も正常だし息もちゃんとしてるから気を失ってるだけだ。保健室まで運ぶぞ」
「そうか…よかった…。それはお前に頼んでいいか?あの様子だと恭哉が清水を殺りかねないから一緒にいる」
「…ああ。頼んだ」
冷静になると、だいたいのことが予想できた。藤が身につけていたブレザーを悠里にかける。そして悠里を抱えて男子トイレを出て行った。
乱れに乱れていた悠里の服。それを見れば清水が悠里に何をしたかは一目瞭然だ。このクソ男が!!
はらわたが煮えくり返りそうだし、正直おれも清水のことを死ぬまで痛めつけてやりたい。
だけど、完全に理性を失っている恭哉を見て、俺がしっかりしていなくては、そう思った。
「すっ、すいませ、ゆるゆゆ許してください…!!」
胃液と鼻水を垂れ流しながら、汚い顔で清水は必死に許しを請うた。
しかし恭哉は一ミリも情をかけることなく、清水の頭を踏み潰す。そのままグリグリと足を捻り地面に擦りつけた。
耳が床についていた清水の顔は、床と擦れて少しずつ血が出て行く。…うわ、これ耳取れるんじゃねぇの。
「こりゃ派手にやってるね」
そんな言葉とともに現れたのはミチルで、一緒に紫乃はいなかった。
「途中で藤と会って、紫乃はそっちにつかせた」
真剣な時はいつも伸びていないミチルの語尾。それが、ミチルも本気でキレていることを表していた。
恭哉は一度だけチラリとミチルに目を向けるけど、特にそこには反応せずに、清水の上に馬乗りになった。
そのまま延々と清水の顔面を拳で殴りつける。
冷静でいる、とは言ったものの、俺だって別にすぐに止める気はない。清水の限界が来たときに、死なない程度に止めるだけだ。
無言で、ひたすら清水を痛ぶる恭哉は本当に恐ろしい。
目には光を宿していなくて、全ての感情を無くしたような表情をしていた。
悠里がこんな恭哉の姿みたら、泣くんじゃねーの。なんとなくそう思う。
あいつは恭哉が優しくて暖かい人間だと思ってる。確かにそれは間違いじゃないし、俺らだってそう思ってる。
ただそれだけじゃない。恭哉は、内に入れた人間に害を及ぼす奴には非情だ。そういう冷たい一面を知らない悠里には、この姿を見せない方がいいのかもしれない。
ミチルも俺も何も言わない。
男子トイレには、人の肉が肉を打つ音が響き続けていた。
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