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「…おい。そろそろやめとけ」
とうとう清水は意識がなくなり、恭哉が殴ってもうんともすんとも言わなくなった。
これ以上やるとヤバイだろうから一声かけたけど、恭哉は聞こえているのか聞こえていないのか、全く手を止めようとしない。
「恭哉」
腕を掴み、名前を呼んだ。しかし手を振り払われ、虚ろな目で見つめ返され、どうしていいかわからなくなる。
「………」
たぶん、恭哉は悠里のことが好きなんだと思う。恋愛的な意味で。だから、ここまでなる恭哉の気持ちを考えると胸が痛くて何も言えなかった。
「…恭哉。今ここで清水を殺っても悠里に罪悪感を与えるだけだ」
すると、今まで腕を組んで黙って傍観していたミチルが口を開いた。
「悠里は、そんなことお前にしてもらって気が晴れるような性格じゃないだろ。お前が一番わかってることだ」
「………」
「とりあえずこいつをどうするか決めるまで、俺らが拘束しとくから。とりあえず悠里の様子見てこい。悠里もお前に会いたがってるだろ」
「…あぁ。悪い」
ようやく我に返ったらしい恭哉は、溜息を一つついて立ち上がる。
俺にも、悪い、と一言残して足早に男子トイレを出ていった。
「…さて。こいつどうすっかねぇ」
「とりあえず音楽室横の空き教室に連れていこうぜ」
決まったはいいものの、意識のない成人男性を運ぶのはかなりの重労働だ。まずは清水を起こさねぇと。
ミチルが水道から水を出し、側にあったバケツに少しためて清水の顔にぶっかけた。
「おい、起きろ」
驚いて目を開いた清水は俺たちを見るなり、ジタバタと怯えて暴れ出した。
「もっ、もうしない、もうしませんからっ、どうか許してっ」
「当たり前だろ、次やったら本気で恭哉に殺されるぞお前」
「でも残念だけどこれで終わりってわけにはいかないんだよね。オラさっさと立て」
ケツに一発蹴りを入れると、清水はノロノロと起き上がろうとする。が、恭哉にあれだけやられた後だ。喧嘩慣れしている奴ならまだしも、清水なんかが立ち上がれるわけがなかった。
「すっ、すいませっ、立ち上がれな…」
遅かったらまた何かされると思ったのだろう。謝りながら涙を流した清水には悪いけど、可哀想だとは微塵も思わなかった。
「チッ…手間取らせんじゃねぇよ。…その上着脱げ。んで、それで顔拭け」
清水の服も顔も血やら吐瀉物やらで恐ろしいほど汚かった。本気で触りたくない。しかし、ここで俺たちが手を貸さなかったら清水が一人で立てるようになるまで待たなければならない。
時間の無駄だし、他の誰かに見られたら厄介なことになる。
だから汚い一番上の服を脱がせたのだった。
両腕をミチルと俺で支え、音楽室横の空き教室まで連れて行く。
中にあった椅子に清水を座らせ、教科書の束と共に置いてあった紐で手足を縛った。さらに、その上から椅子と体を固定するようにくくりつける。
とりあえず、連絡が来るまでここで待機だな…。
悠里が心配で今すぐにでも保健室に駆けつけたかった。それは隣にいるミチルも同じだろう。その証拠に珍しく顔が苛立っている。
悠里の顔、すげぇ酷かった。どれだけ泣いたのか分からないほどぐちゃぐちゃで、それなのにあれだけ綺麗なのが皮肉だと思った。
早く、顔を見て安心したい。
那智side end
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