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歪み
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いつまで経っても、どんな言葉をかけても、葵は決して自分の身にあったことを言おうとはしなかった。
葵を心配する気持ち、
何かあったことは明確であるのにも関わらずそれを言おうとしない葵へのもどかしさ、
それを聞き出すことができない自分への苛立ち、
余裕が無くなるのは当然だった。
「…またか」
顔を伏せた航が、ぽつりと洩らす。
「…またひとりで抱え込んで『無かったこと』にするのか」
その顔にかろうじて笑顔は貼り付けているものの、明らかにいつもとは違う種類のものだった。
「学習しねぇんだな…」
顔を伏せたくなる気持ちを押し込め、やっとのことで航の顔に視線を向けた葵は、そこで動けなくなる。
葵は知っていた。
いつも自分が「ああなる」度に両親がいつもこの表情をしていたから。
まるで失望したかのような。
諦めたかのような。
今ここで何があったか話さなければ、この親友は自分の元から離れていってしまう。
そう考えが至るまでに、時間はかからなかった。
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