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ラストアップside旭秀治
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まさか吉岡君が絶叫物が嫌いだなんて露にも思わなかった。僕は本当に気遣いができない男だと思う。
自動販売機で買ってきたお茶を抱えて急いで吉岡君のもとへ帰る。
自分が好きだからといって相手も好きだとは限らないのに。僕の不注意のせいで吉岡君につらい思いをさせてしまった。楽しかった気持ちは自身へ向けられた苛立ちによりぬりつぶされる。
「吉岡君」
「旭お帰り」
ベンチでぐったりしている吉岡君は弱弱しく手をあげて答えてくれる。何度見ても疲れきっていて申し訳なさが膨らんでいく。本当にごめんね。
お詫びにすらならないかもしれないお茶を彼の膝もとにそっ置き隣に腰がける。二人掛け用のベンチは僕らのものになった。
「吉岡君ごめんね。僕気づかなくて」
謝っても許されるようなことじゃないけど頭を下げずにはいられなかった。
知らないとはいえ苦手な乗り物に無理やり乗せた罪は拭えない。
嫌なことをさせられる苦しみは分からないわけではなかった。しかも好きでも恐怖を感じるジェットコースターなどだ。
苦手なら苦手と言ってくれればいいのに。なんて一瞬吉岡君のせいにしかけて恥ずかしくなった。
吉岡君は優しいことはこの数週間で理解したはず。
嫌だと言い切れない性格だとも。それを知っていてなお吉岡君のせいにするのは筋が通らないと思う。
「旭は気にしなくていいんだよ。俺が言えなかったのが悪いんだから」
ほらまた自分のせいにして丸く収めようとする。
君がそうしようとするたびに僕は心苦しくなるんだ。なんて口が裂けても言えない。
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