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小さな挨拶side吉岡尋海
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旭に挨拶をしてみようと思う。
急に思い立ったのは天気がいいからだ。うん、もうそういうことにしておこう。物事を理屈で押さえつけるのは俺の苦手分野だし、罪をなすりつけられても大空は怒らねえし。
名前はこっそり調べた。旭秀治。名に違わず優等生だという。俺とは正反対だ。ストーカーじみてるけどどうしても知りたかった彼の名前。知れて本当に満足した。
家に帰って、ない知恵を振り絞りこの病状を調べてみた。
ネットで検索しても病気についての本を読みあさっても一向に出てこない。
なんだよこれ!新種の病?
自分の死が頭をよぎったけど、体はすこぶる万全だ。元気がありあまって逆立ちできるぐらい元気だ。
パソコンにかじりついていると姉貴に蹴り飛ばされた。
「とっとと代われや」ってネット中毒者め。
そう毒づきたかったけどそんな勇気はない。姉貴が怖いから。姉貴超怖い。
「何?あんた病気なの?しぬ?」
「誰が死ぬか馬鹿姉貴!てか勝手に履歴見るな!」
「誰が馬鹿だこのヘタレが!」
反抗すると踏みつけられた。ちょっ中身出る出るからやめて!ぎりぎり腹を踏みつけられて声が出ない。おれの命日は今日か…。死を覚悟した瞬間、姉貴があっさりと、重大なことを口にした。
「あーこれってあれじゃね?一目惚れかじゃないの?あんたが恋するってあり得ないと思ってたけどね」
「鯉?」
「泳ぐ方の鯉とか言ったら投げ飛ばすから」
「ごっごめん…」
一目ぼれ?恋?これが。
旭をみると胸が痛くなって切なくて。でもどこか暖かくなって。ぽわーってした気持ちのいい気分になる。気がつけば目で追っていて、気づけば彼をずっと見つめていて。旭のことばっかりが脳内を占める。
こっち向いてくれないかなーなんて希望を持って。
こんな悲しくて苦しくて楽しい感情の名前は、「恋」というらしい。
「俺はどうすれば………」
「適当にしたいことやったらー?とりあえずその子と仲よくなってこいよ」
迷える子羊である俺を導くような姉貴の一言。目が覚めた。うん、とりあえず旭と仲良くなりてぇ。
後のことは後で考えることにする。
姉貴。今日だけは感謝するぜ。普段は鬼みたいだけどな。
そう感謝したらなんでか知らないけど首を絞められた。
本気で死ぬかと思った。旭に笑顔を向けられるまで死ねないと思った。
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