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総受けのフラグ(4/13)
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俺が黒マリモを穏やかな眼差しで見つめていると、ホストが吸っていたタバコを揉み消した。
「そういや……副会長はどうした?そいつに迎えに行かせたはずだが」
副会長?
あ、やべえ。俺殴り倒したんだったな、確か。
俺が黙りこくると、三橋が代わりに説明しだした。
「それはー、副会長がこの二人にキスして……んで真琴が殴った。…うん」
「正当防衛ですけど何か問題ありますか、先生?まじあの腹黒くたばりやがれこのやろー」
「……お前、顔に似合わずやる事ぶっとんでるな。あと無表情で恐ろしい事言うな」
「痛っ」
ホストにデコピンされた。
にしてもやっぱり男の人の手は俺みたいなガキのと違って角張ってがっしりしてるね。
そういや旦那の手も大きかったな……。
これよりもう少しごつい感じの手で、頭を時々撫でられた。
やべえ。少しホームシックみたいな気分になってるぞ、俺…。
「……おい、なに人の手を掴んで目を潤ませてんだよ。誘ってるのか?」
「え…っ?ご、ごめんなさいぃ!?」
何してんだ俺。
まるで変態じゃないか。
パッと掴んだ手を離すと、ホストがジッと俺を見つめてきた。
何?何ですか?怒ってるんですか?
俺ちゃんと謝りましたよね!?
わけが分からずホストと視線をジッと交わし続けていると、三橋がそれを遮った。
「これ以上フラグたたせてたまるか。伊坂、真琴に目をつけたら許さねぇぞ」
「み、三橋……?」
急に三橋に睨まれたホストは驚いた表情を浮かべるが、すぐにフッと笑みをこぼした。
「らしくねぇな、三橋」
「……っ、黙れヒモ!」
「ヒモじゃねぇ!」
二人ともケンカはやめたまえ。
とりあえず三橋の腕を掴んで顔を覗き込む。
「三橋……」
「ま、真琴……っ」
よし、ケンカ中断できたぞ。
にしても三橋っていつも顔赤いな。
ほんとは熱あるんじゃないか?
「俺、授業受けたいんですけど」
「じゃあ次の時間俺の授業があるから西條と一緒に紹介してやる。行くぞ、真琴」
「真琴の事名前で呼ぶんじゃねぇよ、伊坂!フラグたたせんな」
急に三橋が怖くなってきたぞ。
俺と黒マリモは二人のあとを慌てて追いかけた。
丁度チャイムが鳴り、それぞれの教室から生徒達が廊下に出てくる。
一気に廊下が騒がしくなった中、ホストが俺に話しかけてきた。
「俺は伊坂 浩司(イサカ コウジ)だ。特別に真琴には浩司先生と呼ばせてやるよ」
「真琴、呼ばなくていいから」
三橋、そんな厳しい目つきで俺を見ないでくれ。
それに元々名前を覚えるつもりないし。
とりあえず、
「先生、気安く触らないで下さい」
俺が肩に置かれたホストの手をはたくと、三橋が鼻で笑った。
「は、フラれてやんの」
「うるせぇ。それにつれねぇ方がオトしがいがあるんだよガキ」
またケンカをはじめたぞ。
……いつも仲悪いのかな?
廊下を通る人達のこちらを見る視線が痛い。
「大崎ってモテるんだな」
「は?」
何を言ってるんだ、黒マリモくん。
「けど、俺も負けないから」
「はぁ……?」
胸に拳を作って顔をほころばせる黒マリモ。
何かわからないけど、応援してるよ。
それからケンカする二人を前に、長く複雑な廊下を歩いているとまたチャイムが鳴り響いた。
授業開始のチャイムか?
「やべ、始まっちまった。急げよ、お前ら」
「………誰のせいだと思ってるんですか、先生」
「ご、ごめん真琴、俺が…」
「三橋は悪くねぇよ」
「真琴……」
全てはちんたら歩いてケンカの相手をするホストが悪い。
それに俺、三橋の味方だし。
「仲良いんだな。けど友達止まりだろうよ。ま、せいぜい頑張りな、三橋」
ホストは意味わからない捨てゼリフをはくと、歩みを止めた。
「おら、早く教室に入れ三橋。真琴達は俺が入ってこいって言ったら入ってこい」
三橋が舌打ちをして教室に入っていくと、ホストもその後に続く。
それまではよかったんだが、俺は次の瞬間信じられないものを耳にした。
「伊坂せんせぇー!!」
……ほわっつ?
「やっぱりいつ見てもかっこいい!」
「抱いて下さい!」
「抱かせろー!」
あれ?あれ?
ここって男子校だよな、なのに何で黄色い声が聞こえてくるんだ?
つかうるせぇ。耳キンキンするんだけど。
抱いて下さい?
何それ、あんな男にギュウッと抱擁されたいわけ?
それって男としてどうなんだよ。
そんな屈辱すぎる仕打ち、想像するだけ吐き気がするんだけど。
気持ち悪い。
「フン、じゃあ可愛くねだってみろよ。あと抱かせろって言った奴覚えてろよ。…腰たてなくさせてやるよ」
……ついでにホスト、お前も気持ち悪い。
胃をムカムカさせていると、ホストが再び口を切った。
「授業始める前に転校生を紹介する。入ってこい。真琴、西條」
黒マリモがもじもじと渋っていたから俺が先に教室へ足を踏み入れる。
黒マリモと並んで教壇に立つと、教室が波を打ったようにうるさくなった。
「……えっと、大崎 真琴です、よろしくお願いします」
サラっと言い終わるとひそひそと噂するのが聞こえた。
「……普通?」
「いや、ちょっと可愛いかも」
可愛くねぇよ。
誰だ、ふざけた事言った奴。
「俺は西條 凪。別によろしくしなくていいから。興味ないし」
……ツンドラか。
せめてデレてツンデレにしろよ、反感買うぞ。
黒マリモのコメントに苛立った奴が多いのか、卑劣な言葉が飛びかった。
「何あいつ生意気」
「てかキモいんですけど」
「こっちこそよろしくしたくねぇし」
おまいら言いすぎだ。
確かに黒マリモの発言にも問題はあるけどさ。
「てめぇらうるせぇぞ。静かにしろ。
二人とも、空いてる席にテキトーに座れ」
ホストに言われて前を見ると……、……あれだ、今気が付いたがほとんどの人の視線が黒マリモに注がれている。
俺……いい感じ存在感ないんじゃないか?
よし、これで影でこそこそと暮らしていけるぞ。
安堵して再び顔を上げると三橋が小さく手を振っていた。
隣が空いてるみたいだからそこへと足を進めていく。
何故か黒マリモも後ろを追いかけてくるんだが……。
……お?
通り道にサッと出された足。
これはこれは……俗にいう"引っかけ"じゃないですか。
何だね、その足。
踏んでほしいのか?
踏んでほしいからそんな堂々と足を出しているんだろう?
よし、なら全力で踏んでやんよ!
……踏まないけどね。
踏んで恨まれたら嫌だし。
それにこれからの生活に支障が出る。
だからこういう場合、避けるのが無難だよね。
サッと跨いで避けると、本人はそれを気にせず俺の後ろの人物を睨んでいる。
……どうやら黒マリモを転ばせるのが本命らしい。
ま、黒マリモもあれだけ足が出てたら気が付くよね。
きっと大丈夫「わ…っ!?」じゃなかったらしい。
とっさに振り向いて転びかけてる黒マリモの体を支える。…つもりが支えられず、尻餅をついてしまった。
「いってぇ…(尻が)」
黒マリモは無事みたいだな。
にしても格好悪いな、俺。
ちくしょう、旦那みたいにムキムキになりてぇ。
不意に、ホストの声が教室に響いた。
「今足を引っかけた奴立て。そしてそのまま教室から出てけ。てめぇに授業受ける資格はねぇよ」
「……っ」
足を出した本人はビクッとするとそろそろと立ち上がって俺達をキッと睨んでくる。
その目の端には涙が溜まっていた。
……あのさ、今初めてきちんとお前の顔見たんだけど……一つ言っていい?
アレ、股間に付いてんの?
男でこんな可愛い面の奴いるんだな、びっくりした。
女顔の奴はそのまま涙をこぼして教室から出ていってしまった。
同情はしないよ、今のはあいつが悪いんだし。
というかいつまで胸に顔をうずめてるんだよ、お前は。
……ヅラとっていいかな?
とりあえず黒マリモの肩を叩いて覗き込む。
「大丈夫か?怪我してないならそろそろ離れてくれない?」
「ご、ごめ……、お、大崎って何かいい匂いするな」
おい、何言ってんだお前。
今何だかよくわからない悪寒がぞわっときたぞ。
とりあえず早く、
「離れろ」
「は、はい!」
黒マリモは俺からわたわたと身をひくと、立ち上がりかけた俺に向かって笑いかけた。
「さっきはありがとう、大崎。お前って優しいな」
どういたしまして……ぇ?
上から見下ろしたため、黒マリモの裸眼とバッチリ目が合う。
黒マリモの目は海のように碧かった。
「……綺麗」
思わずそう口走ると、黒マリモの顔がカアッと真っ赤に染まる。
やべ、怒った?
男に綺麗って言われてもあまりいい気しないだろうしな。
俺は黒マリモに小さくゴメンと言うと三橋の元へ向かった。
「はぁ……」
やっと座れたぞ。
椅子に腰かけると、気難しそうな表情をした三橋が話しかけてくる。
「チワワに目を付けられると色々やばいよ、真琴。なんであそこで西條を助けたんだよ」
「俺だって面倒事に巻き込まれるのは避けたいよ。
けど人が危ない目に合いそうで、それがもし自分で解決できそうな事だったら尚更見て見ぬふりなんてできないし」
「真琴…………そうだよな、俺が間違ってた。かっこいいな、真琴って…!」
三橋……。
感動しているとこ悪いけど、
実はこれ、旦那の受け入りなんだ。
かっこいいよな、旦那は。
俺もああいう人になりたいよ。
……にしてもあれだ。
しくじったぞ。
手首捻った…あとお尻痛い。
少し尻を浮かせてさすっていると、三橋がジッと見てくる。
「何?代わりにさすってくれるの?」
「な……っ!?」
そんな顔を真っ赤にして怒るな。冗談に決まってるだろ。
「違うから…!っ、ただ、その、エ、ロいからそういうこと、やらない方が」
「何?聞こえないからハッキリ言って」
「だから!そういうことするな」
……。
何でそんなに怒ってるんだ、三橋。
黒マリモが空いてる端の席に座ると、ホストが早速授業をはじめた。
数学か……。
この高校今どの辺りを勉強してるんだ?
三橋に教科書を見せてもらい、確認する。
「なんだ、俺もう習ってる」
「まじで?じゃあ今度教えて」
「俺、人に教えるの苦手だから無理」
そうきっぱり言葉を返すと、三橋がしゅん…とうなだれた。
そんなにショックな事なのか?
何か三橋を元気づける話題ないかな。
あ。そういや、
「さっき黒マリモの目を見たんだけど青かった」
「……!やっぱり西條が王道的に総受けになるべきだよな!待ってろ、今俺が西條にフラグが立つ計画を練ってやる」
三橋は相変わらず意味のわからない事を言って俺の肩をガシッと掴む。
するとそこにホストの涼しい声が割って入ってきた。
「真琴、お前初日なのにたるんでるな。ちょうどいい、お前がこの問題解け」
なんで俺だけ怒られたし。
しかも目をつけられた。
理不尽じゃないか。
俺は三橋をキッと睨むと黒板に向かっていく。
……実はこのあとムカつくホストが何度も俺を指名してきて目立ってしまった。
休み時間になって三橋に何度も謝られたのは言うまでもない。
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