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総受けのフラグ(7/13)
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口をゴシゴシ擦っていると、会長が近づいてきて俺の胸倉を掴む。
そしてそのまま左の頬を殴ってきた。
──ガッ
「───…ッ!!」
「調子に乗りやがって」
いってぇ……!
調子乗ってんのはどっちなんだよ、こら。
倒れ込んだ拍子にまた思いっきり尻打った。
あ、口ん中も切れたな。
口内に血の味が広がり、頬がじんわりと熱帯びてきた。
立ち上がって会長を睨みつけると腹黒野郎が口を挟んでくる。
「会長の一撃喰らって立てるのはすごいですねぇ。やっぱり山田くんは面白いです」
高校生のガキのパンチなんか本物のやつと比べたらヘナチョコだから。
ていうか、何この状況を面白がってんだてめぇ。
「ほんと腐ってんじゃねぇの、あんたら」
「ふん、言ってろ」
その見下ろす顔ムカつくな。
俺は会長に近づくと、血の混じった唾をバ会長の顔にペッと吐きつけた。
「……ッ!」
あ、その歪んだ顔最高ですね。
「じゃあ勝手に言わせてもらいますよ、バ会長」
「てめぇ……」
会長は頬についた唾を拭うと、今にも掴みかかってきそうな鋭い眼光で睨みつけてくる。
殴り返すために会長に歩み寄ろうとすると、三橋が俺を羽交い締めして邪魔してきた。
「真琴」
「離せよ三橋っ」
「あんな奴殴っても意味ないって…!初日から問題起こしたら迷惑をかける人だっているだろ!?」
「……ッ」
……旦那……。
「それにあんな奴のせいで真琴が悪者になるとかありえねぇし。お願い、……頼むから」
「……」
三橋の懇願する声が耳元に届く。
そのおかげで少し冷静になった俺は体の力を抜いた。
「……分かった。さんきゅ、三橋」
俺がそう呟くと会長はつまらないとでも言うような目で見下ろしてきた。
……そうだよな、こんな奴に構う必要ないよな。
周りが静寂に包まれている中、俺は座っていた席に戻る。
そして伸びきったうどんを口の中に一気に掻き込んで食べ終わると席を立つ。
返却口に器を返してそのまま食堂を出ようとすると会長が後ろから声をかけてきた。
「お前、何無視してんだよ」
俺はそんな会長を一瞥すると一言放つ。
「あ、まだいたんだ?」
屈辱的だよね、きっと。
いつも周りにちやほやされて見てもらう事が当たり前になっているんだから。
会長が固まって何も言わなくなると、俺は三橋と黒マリモの方を見る。
「俺、先に教室に戻ってるから」
「ま、真琴……っ」
三橋が何か言いかけていたが俺は無言で食堂の扉を閉じた。
……ここで一つ問題発生。
俺、教室への戻り方がわからない。
でもさ、あんなカッコつけて出ていったのにもう一度戻って聞きに行くとか……情けなすぎてできないから。
慣れない事はするものじゃないね!
所詮俺みたいな奴は旦那みたいにカッコつけられないんだな。
のろのろと現在地がわからない廊下を歩いていると、途中で販売機と出会った。
あ、ジュースだお。
絶賛キャラ崩壊中。
だって今の俺の心境、めった刺しの乱雑斬りだし。
男にキスされて、
旦那とケンカしたかと思えば、
また男にキスされて、
周りから注目浴びて、
理不尽にボコられて、
この年で迷子になっているんだから。
ここ何年かの中で一番ショックな日だ。
……とりあえず、何かのジュース買おうかな。
殴られて腫れた頬を冷やしたいし。
偶然視線がレモンティーをかすめたとき、ある人物の言葉を思い出した。
"今度レモンティーおごってね"
「……っ」
あのチャラ男会計とやらの事を思い出し、また顔に熱が集まるのを感じる。
ショックな出来事の項目に、
男の服をはいだ事を付け足すのを忘れてた。
ま、無難にレモンティーでもいっか。
俺はカードを使って紙パックのレモンティーを購入すると、どこにあるか分からない教室を目指して歩き始めた。
とりあえず行き当たりばったりで歩いて階段を上がると、ある扉に行きつく。
「開かねぇ」
……ん?
カードを入れるっぽいところがあったから試しに入れてみると、ガチャンと鍵が開いた。
色々便利だな、このカード。
扉を開くと、空気がぐわっと持っていかれるのを感じた。
「……屋上?」
秋空に温かい太陽が登ってポカポカの丁度いい気温になっている。
……うん、あれだな。
「サボろう」
正直言うと疲れたし。
俺は屋上に足を踏みこむと適当な場所に寝転ぶ。
冷たいジュースを少し飲んでから紙パックを腫れた頬に当てて目をつぶった。
そよそよと風が吹いてウトウトとしている中、チャイムが微かに聞こえる。
「ねむ……」
俺が眠りに落ちかけたそのときだった。
ガチャンと屋上の扉が開いて誰かの声が響く。
「あれ、先客? そこ、僕の特等席なんだけどなぁ」
「……!」
ガバッと起き上がるとその人物と目が合う。
ま、まさかのチャラ男会計…?
「あー……さっき会ったね、君。名前何だったけー?」
"生徒会と関わると危ない"
という三橋の言葉を思い出してとっさに、
「……山田 太郎」
と答えてみた。
「嘘でしょ、真琴くんだよね。僕覚えてるよ…クスッ」
「……!」
ムカっ。
やっぱりこの人性格悪いなこのやろー。
「にしても、ここは生徒会のメンバーしか入れないんだけどなぁ」
「……普通にこのカードで入れましたけど」
「ふーん?」
会計は俺の手からカードを取ってジッと見ると、すぐに返してきた。
「その種類のカード、生徒会メンバーにだけ発行される特別なやつなんだよね。何で君が持ってるのかな」
「……え?」
もしかしてのもしかして、これも旦那の差し金とか?
理事長を脅していいものを……って、すごく有り得るな、この話。
「見かけない顔だけど、何年生?僕一応全校生徒の名前知ってるからさ」
会計が少し怪しむような目つきで笑いかけてきたため、どもりながら答える。
目が笑ってないって。怖いんですけど。
「……一年で、今日転校してきたんですけど」
「理事長からは西條 凪くんという子が転校するとしか聞いていないね」
やっぱり。
副会長も俺の名前を知らないからおかしいと思ってたよ。
「身内らしいし、すごくそいつの事可愛がってたから俺の事忘れてたんじゃないですかね」
多分。
「ま、あのエロジジイだったら有り得る話かもね、あはは」
笑いながらエロジジイとか言う人初めて見たんだけど。ていうか、
「他の生徒会メンバーもここに来るって事ですか?なら俺出て行きます」
「大丈夫。ここは僕だけの屋上だって決めてあるし」
「僕だけの……?」
「ちょっと他のメンバーの奴を脅したんだ、あはは。生徒会で一番権力があるのは僕だから」
何かこの人怖いんですけど。
「だから少しお話しようよ。君もサボりでここに来たんだろうし」
「はぁ……」
そろそろと腰を下ろすと会計が隣に座ってくる。
近い。近いんですけど。
「そういえば何で他の生徒会メンバーが来るのを嫌がったの?普通の子だったら喜ぶのになぁ」
「ちょっと色々あったんです。……それに俺ノンケだし」
「へぇ。何があったんだい?」
そこ、聞いてくる?
土足でどしどし踏み込んでくる人だな。
まあ、言うしかないか。
何か無言の圧力感じるし……
「副会長と会長にキスされたんです。会長には一発殴られたし」
「それは災難だね。何かやり返したの?」
「副会長は殴って気絶させて、会長には舌をかじって唾を吐きつけました」
「あっはは!何それ傑作じゃないか。変わってるね、君」
何故か爆笑してるあなたも変わり者だと思いますけど?
「そっか、じゃあ僕が代わりに二人にお灸をそえてあげようかな。とりあえず腰が立たなくなるまでヤり殺すよ」
「はぁ。ありがとうございます……?」
何かこの人だけは敵に回したくないな。
ていうか、腰が立たなくなるまで殴って蹴ってフルボッコするのか?
あまり強そうに見えないけど……意外だな。
「ありがとうございますって……あは、君意外と酷だねぇ」
「……?」
何が?
俺が思案顔をしていると、会計がスッと手を伸ばしてきた。
「このレモンティー、僕のために買ってくれたの?」
「違います」
「何だ、残念。じゃあそれ、僕にちょうだい」
「でも飲みかけだし……」
「構わないよ」
会計はレモンティーを俺の手から奪うと、ストローを使って一口飲んだ。
「レモンティーて、甘酸っぱくておいしいよね。
ファーストキスはレモンの味って言うけど……真琴くんは何の味がした?」
「ごほっ、はぁあ!?」
やべ、声裏返った。
急に何聞いてくるんだしこの人。
「うぶだね、君。可愛い反応ありがとう。副会長とのファーストキスはどうだった?」
「ファーストキスじゃありません!人をバカにしないで下さい」
「あれ、そうなの?つまんないなぁ」
ダメだ、この人といると自分のペース崩される。
話していると丸裸にされそうだ。
しばらく沈黙が生まれたから、青い空を仰ぎ見る。
「この屋上いいだろう?他の屋上は汚いしね」
「……他にあるんですか?というか汚いって…」
「他の屋上には、エロジジイの自称監視カメラがあるし、S○Xする場所だから」
理事長の噂って本当だったんだな。
ていうか今何て……?
「え……え?」
「まさか知らないとか言うんじゃないだろうね?
簡単に言えば「ちょ……!知ってますから口に出さないで下さい!」
「あはは、顔真っ赤ー。」
うるさい。
ていうか、セッ……えす、いー、えっくすをしている場になっているだと?
「お、女を連れ込んでるって事ですか……?」
「……は?…………、もしかして……知らないの君?」
「何が?S○Xくらい知ってますけど」
「そういう意味じゃなくて…………まぁ、いいや。じゃあ体に教え込んであげるよ」
会計はそう言うと俺を押し倒してネクタイに手をかけてきた。
俺のネクタイをシュルッと外した会計は、手際よくワイシャツのボタンを外していき俺の肌をあらわにする。
「……ちょ…っ、」
何?え、何?
もしかして服をはいだこと根に持ってた?
だからこうやって俺のをはぎ返したのか?
会計は俺の困惑した表情を見て、フッと笑った。
「可愛いね、真琴くんは」
「ちょっ、くすぐったいんですけど、って…………え……?」
会計が……あの、何と言ったらいいのだろうか。
急に俺の胸板に顔をうずめたかと思うと、あろう事かそこを吸ってこようとする。
おっおっおっおっ。
今日二度目の現実逃避。
頑張れ、俺。
自我を保つんだ、これが今の現実なんだ。
臆せず言うんだ、俺……!
「せ、先輩……っ!」
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