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総受けのフラグ(12/13)
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昴は俺のした事に一瞬面食らった顔をした。
けど最終的に切なそうな表情をしてため息をつく。
「色んな漫画やアニメに無自覚キャラや鈍感キャラがいたけど、リアルで味わって分かった。こんな苦しいものなんだな」
「はぁ?」
唐突に意味の分からぬ事を昴が口にしたため、思わず素っ頓狂な声を上げる。
でも俺のせいで昴はこんな切なげな顔してんだよな?
「昴……ごめん?」
「え、何が?お前の気持ちは受け止められないのごめん?告る前に拒否されたの、俺!?」
「や、違うから。とりあえず落ちつけ。ていうかお前俺に何を告白したいんだよ」
「そ、それは…」
昴が吃って目を逸らす。
そんなに言うのを渋るような内容なのか?
「言えよ。俺さ、生半可な気持ちでお前と友達になろうとしたわけじゃないから。
例えお前に誰にも話せないような趣味が合ったとしても受け止めるつもりだし」
「真琴…」
「じゃなきゃ名前で呼んだり、他人にこんなに踏み込んだりしない。
俺、友達に対しての接し方って今まで目を背けてきたから分からねぇ。けどもっと知りたいって思ってる」
「真琴…そういう意味じゃなかったけど、あまり知られたくない趣味はあるよ」
昴はため息をつくと、俺の目を見てもう一度ため息をついた。
やめてくれ、人の顔を見てため息をつくのは。
けっこう傷つくんだけど。
「だって真琴、ノンケだし常識人だし……。腐男子な俺を受け止めてはくれまい…」
「ふだんし?」
何だね、それは。
まぁ、それが何だろうとどうでもいい。
「そんな要素を含めての昴なんだから頑張って受け止めるよ」
「真琴……俺今逃げ出したい気分だ。腐男子になって初めて腐ってしまったことに後悔してる…」
「え?性根腐ってるようには見えないけど?」
「あ、違うから。そういう意味じゃないから」
じゃあどういう意味だよ。
時々昴の言ってる事が分からないのは俺のボキャブラリーが乏しいせいかな。
そう思いながら昴の横を歩いていると、黒マリモが早歩きで俺の脇についてきた。
やべ、また存在忘れてた。ごめんね、黒マリモ。
「…ていうか何号室?」
「305。あ、ここだよ、この部屋。真琴、この部分をカードでスライドして」
言われた通りに行動すると、カシャンとロックが解除された音が聞こえた。
ドアノブを捻って部屋へと足を踏み入れる。
「……広っ」
靴を脱いですぐに中を確認してみる。
個室が二つに広い居間。
そして洗面所。何かホテルのやつみたいにトイレと風呂場が一緒になってる。
てか洗濯機が見当たらないんだけど。
「何か真琴、行動早いな」
「だって早く落ち着きたいし。洗濯機どこ?」
「コインランドリーあるから使うとき連れてくよ」
「ふーん。で、部屋割はどうすんの?」
「俺は居間で寝るから真琴と西條は個室使えよ」
「そ。じゃあ黒マリモ、右と左、どっちの個室がいい?」
「だから西條だって…!何回言えば覚えてくれるんだよ…」
「じゃあ右ね。俺左の個室使うから」
「シカト!?」
うるさいなぁ。
今イライラしてるし疲れてるんだよ。
居間に置かれていたダンボールを持って自分の部屋に運んでいると、昴がそれを手伝ってくれた。
「手伝うよ、真琴」
「さんきゅ。でもお前、自分の荷物運ばなくていいのか?」
「新しい奴が入ってくるまでは元の部屋も使っていいって」
何だそれ。管理人テキトーな奴だな。
「つか真琴、荷物これだけ?」
「俺一人暮らしだから」
「へー…」
昴が歯切れ悪そうに相槌をする。
「…聞きたきゃ聞けばいいのに」
「え?」
「何で一人暮らしなのか気になるんだろ」
「まぁ……」
昴がちらっと俺の顔を見て頷く。
「両親いなくて、かわりにじいちゃんとばあちゃんが育ててくれたんだ」
ダンボールの中から荷物をごそごそと取り出しながら口を開く。
整理している内に暑くなったため、制服のジャケットを脱いでネクタイをほどいた。
「…けどばあちゃんは体弱くて死んじゃって、じいちゃんも病気になって今は入院してる。金銭面ではキツイ状況だったけど、美味しい話を貰ってこの高校に転入してきたって感じ」
俺がそう言うと、昴がジッと見つめてくる。
「真琴に少しは近づけたのかな、俺」
「え?さあ。……わ、何だこれ」
カップラーメンが詰まった箱。
俺こんなの入れた記憶ないんだが。
でも俺宛てだし……旦那か?
経費が浮いて助かるな。
昴に手伝ってもらい大体の荷物を置きおえると、一息つくため床に寝転ぶ。
すると急に昴が声を上げた。
「ま、真琴!何それ…!」
「は?」
「誰?誰につけられたんだよ」
昴がすごい形相で俺の首筋に触れてきたため、思わず体をびくつかせる。
「そのマーク誰がつけたんだよ」
「ちょ、何、何?とりあえず離れろよ」
何故か怒っている昴から距離を置き、鏡を覗いてみる。
……ん?
首筋に赤い痕。
何これ、まるでキッスマークみたいじゃないか…って、…待てよ?
「そういやあの時…」
分かった。真知先輩だな、やったの。
屋上で首を甘噛みしてきたし。
何やってくれてんだよ、あの人。
「それで。誰?」
昴は相変わらず圧力がある表情で俺に迫ってくる。
「えっと、あれ、ただの虫刺されだって。昨日から赤かったし」
「……本当?」
「う、うん」
ごめん、嘘だよ。
だって真知先輩につけられたとか言うと、また怒られそうだし。
いたたまれなくて会話をそらそうとする。
「えっと、あれだな、汗かいたし早くシャワー浴びてぇな」
「…?大浴場もあるけど、今日そっち行くか?」
「いいや、面倒な事はもう避けたいから今日はここの風呂入る」
これ以上何かあったら身が持たない。
大浴場には気が向いたとき行くとしよう。
「トイレ行ってくる。昴も必要なものだけ俺達の部屋に持ってくれば?服とか」
昴にそう告げてトイレへと足を進める。
さっきから漏れそうなんだよね。
急いで洗面所のドアノブに手をかけると、もわっとした湯煙りに襲われた。
「……うっ」
「…大崎?」
これは黒マリモの声…お前、風呂に入ってるならカーテンの仕切り使えよ。って、は……?
シャワーからサアァと振り注がれるお湯の中に立つのは、金髪に碧眼のとんでもないフェロモンを放つイケメン。
お前……誰?
まさかのまさかのまさか、お前が黒マリモだとか言うんじゃないだろな。
「お…大崎……」
黒マリモ(多分)がゆっくりと俺に近づいてくる。
それに合わせて俺は後ずさっていく。
「大崎…、逃げないでよ」
いやいやそんな無茶言うなし。
誰でも裸で迫りくる人がいたら逃げたくなるから。
それに目のやり場に困る。
自然と下半身に目が……って、………ッ!?
下のサイズがでかい……だと?
顔に似合わず何でっかいものぶら下げてんだコイツ!?
ちょっと男としてうらやましいんだけど。
「お、大崎どこ見てんだよ…。ヘンタイ」
「ごほ…っ、はあぁ!?」
何で俺がヘンタイ扱いされなきゃならねぇの?
別に見たくて見てるわけじゃねぇから。
俺そういう趣味ないし…!
焦りでテンパりじわっと頬が熱くなる。
「別に大崎になら全部見せてもいいけどさ…」
「全力で断る。昴!助け…」
いない。
こういう時に限って昴がいないじゃないか。
早く戻ってきてくれ、昴…!
そう願いながら少しずつ後退していたが、背中にトンッと何かがぶつかった。
壁……行き止まりだ。
とっさに横に逃げようとすると、黒マリモが壁に手をつけてそれを阻止する。
「ちょ…、お前近ぇ。離れろよ」
「……嫌だ」
黒マリモはそう言うと俺に顔を近づけてぐくっと距離をせばめた。
「そんな顔するなよ…。大崎もこの顔嫌い?」
「は?何で?」
「俺よく外人外人って小さい頃イジメられてたんだ。女の子みたいだって」
いかにも小学生の低中学年でありそうなイジメだな。
「今はイケメンだからいいじゃん。男としての部位も強靭に育ってるし」
色々うらやましいよ…。
「…本当!?俺ちゃんと男っぽいか?嫌いじゃない?」
「うん」
完全なるイケメンなのに自分では分からないのか?鈍いな…。
「まぁ、とにかく離れて。あと服早く着ろよ、風邪ひくぞ」
お前が歩いたところの床もびしょびしょだし。
あとで拭かないとな。
小さな水溜まりを見てため息をついていると、黒マリモがまたずいっと顔を近づけてくる。
金髪から滴る水滴が一粒俺の頬に落ちた。
「待って。俺、まだ言いたい事言えてない」
「別に今言わなくてもいいんじゃ…」
「今じゃなきゃ大崎逃げるもん」
黒マリモの碧眼が訴えかけるように煌めく。
ていうかお前、顔が綺麗過ぎる。
何か気恥ずかしくて直視できないんだけど。
「分かった。言いたい事って何?」
よく見ると黒マリモの腕に鳥肌が立っている。
やっぱり寒いんじゃないか。
本当に風邪ひくぞ…?
早く言いたい事言って温まれよ、ばか。
周りの奴に心配かけんな。
「俺の名前……呼んでよ」
「え?」
「俺は黒マリモじゃない…!」
確かに今のお前は黒マリモじゃないな。
言うんだったら異国の裸の王子様って感じ。
「俺は西條 凪って言う名前があるんだよ。
あの変装のどこがおかしいのか俺は分からないけど、直すから。
頑張っておかしいところ見つけるから…!だから…」
黒マリモはそこまで言うと口をきゅっと結んで俺を見つめてくる。
若干泣きそうな顔してるな…。
「……男なら泣くなよ。で、"だから"の続きは?」
「西條でも凪でもどっちでもいいから、呼んでほしい…」
結局最後辺りで瞳から涙をぽろっとこぼしたのが見えた。
いや、涙じゃなくて水滴だよな。
男のプライドにかけて、そういう事にしておこう。
「……ごめん、そこまで傷ついてるって思わなかった」
若干男の裸の背中に手を回すのには抵抗があったが、軽くぽんぽんと撫でる。
「えっと、さい…「西條」うん、西條な。ちゃんと呼ぶから。だから早く服着ろよ」
俺がそう言うと、西條が嬉しそうにニコッと笑った。
そして黒マリ…じゃなくて、西條から離れようとしたとき、それは起こった。
「大崎…!」
「わっ……」
あろう事か裸の西條が激しいスキンシップで俺に抱き着いてくる。
突然の事で支えきれず、床に倒れこんでしまった。
「大崎…俺、嬉しい…!」
「わ、分かったから…!とりあえず早くどいてくれ…っ」
重いし、お前のアレが俺の太ももに当たってるんだよ…!
「……真琴?」
カタンと音がした方を見ると、昴が呆然とした表情で立ちつくしている。
……待てよ?この状況…。
西條が俺の上におおいかぶさっている(しかも裸)、しかも昴は恐らくこいつが西條だとは分かってない。
転校初日から見知らぬ男に押し倒されている俺……どうしよう、色々勘違いされるかもしれない。
顔がボッと熱くなるのを感じながら、懸命に言葉を選んで弁解しようと試みる。
「違…っ、昴、こいつは…」
「何だ、もう戻ってきたの」
西條はしれっとそう言うと、昴をジッと見据えた。
先程とは打って変わり、冷めた表情をしている。
その視線を受けた昴はというと、自分の部屋から持ってきたらしい服を驚きで手から落とす。
が、次の瞬間すごい勢いで歩みより西條をドンッと壁に押し付けた。
「何してんだよ、てめぇ…!」
「抱き着いてただけじゃん。いちいちうるさいな」
「じゃあ何で裸で押し倒してんだよ。どう見たって"抱き着いてただけ"には見えねぇ」
昴の奴よくこいつが西條だって分かったな……ていうか何で掴みかかってんだよ。
殴り合いとかするんじゃないだろうな?
急いで仲裁しようとする。
「おい昴、本当だって。そいつ風呂に入っていて成り行きであんな状態になってただけだ」
「…真琴」
「俺だって野郎に押し倒されるなんてゴメンだし。あれはただの事故なんだよ。西條を離してやれ」
「……」
俺がそう言うと、昴が納得のいかない表情で壁に押し付けていた西條の肩から手を離す。
「これ以上誤解されるような事してみろ。許さねぇぞ西條」
「俺ケンカ強いし。総長ナメるな」
「お前は大人しく会長達とイチャイチャしてろよ。お前は受けの方が絶対いい。早く俺に萌えをくれ」
「意味分かんないんだけど。何で俺がそうならなきゃいけないんだよ、あんたが総受けになれ!」
お前ら何意味が分からねぇこと言ってんだ。
てか二人ともよく噛まずに早口でまくし立てられるなぁ。
俺がちょっと感動していると、昴がバンッと強く壁を叩いた。
「俺、男無理だから。一人を除いて男は無理。
つか西條はフェロモン垂れ流しなんだから大人しく総受けに……………」
昴の視線が西條の下半身辺りでピタッと止まる。
その目は驚愕で大きく見開かれていた。
うん、言いたい事は分かる。
西條のアレってガチで大きいよね。
「……負けた……」
昴がガクッと膝をつき、うなだれる。
気にするな、昴。こいつが馬鹿みたいにでかいだけだ。
「え?何?何の事?」
西條がおろおろとした表情で俺の方に歩みよってくる。
お前の立派なソレの事だよ。
ていうか凶器をぶらぶら下げたまま近寄ってこないでくれ。
「西條、とにかくお前もう一度お湯浴びて体を温めてこい」
「はい」
「よし、いい返事だ。昴、お前は俺と一緒に濡れた床を拭け」
「何で俺が西條の後始末を…」
「拭かないと床が悪くなるだろ。別にやりたくないならいいけど。俺一人でやるし」
俺が自分の個室から雑巾を持ってきて拭き始めると、昴が慌てて俺の腕を掴む。
「お、俺が全部やるから…!真琴は座ってろよ」
「え……」
昴は俺の手から雑巾引ったくると、床にこぼれている水を拭きはじめる。
俺の仕事とられた…。
ていうか昴のこの変わり様は一体なんだね?
さっきまでふて腐れた表情していたのに、今はキリッとした表情で床を磨いているぞ。
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