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イジメって何?(6/14)
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……長沢と一緒に教室へ戻った頃は、すでに授業が終わっていて休み時間だった。
自分の席に座ると、慌てた様子で昴が話しかけてくる。
「真琴…!大丈夫か?何かされなかったか?」
「は?んー…しいて言うなら、長沢と友達になった」
「え……何でそうなった!? 短時間で何があったんだよ?」
昴が困惑した表情で迫ってくる。
それに対し、俺は体を少し反らして眉をひそめた。
「…ちょっとうるさい。てか、俺の質問のほうが先」
頬杖をつきながら、昴の目をじっと見つめる。
すると昴が少し顔を赤くして目を逸らした。
"それ"だよ、"それ"。俺がお前に聞きたいこと。
「お前さ、何で俺が見ると顔赤くすんの?」
「え…っ」
「俺がキモくて怒ってんの?それともただの"あがり症"?まぁ、何でもいいから答えて」
俺がそう言うと、昴は表情を曇らせて目線をさ迷わせる。
そしてその後ボソッと小さく答えた。
「…言えない」
これ以上踏み入ってくるなって事なのかなぁ…。
「キモいとは思ってないんだな?」
「うん」
それならこれからは気にしない事にするか。
…よし、ここからが本題だぞ。
「お前、会長の親衛隊員なんだってな」
「…!どうしてそれを」
驚いた拍子に、昴が机をガタッと揺らす。
非常に分かりやすい反応どもども。
「本当は会長の事好きなのか?」
「ち、ちげーから」
「じゃあ何で」
「……わかったよ、全部話すから。…放課後、俺の部屋に来てくれねぇ?」
「え?あ、うん」
急にかしこまってどうしたんだ?
もやもやしたものを胸に抱えたまま、次の授業を受ける。
昴の横顔をちらっと盗み見ると、何かを決めたような表情で黒板を見据えていた。
「……大崎っ」
授業が終わってすぐ、長沢が駆け寄り俺の机の前にちょこんと立った。
「…長沢?」
「大崎って何かの部活に入らないの?」
「帰宅部でいいよ、めんどいし」
「そっかぁ…ちなみに僕は家庭部なんだ」
長沢はそう言うとにこっと笑いかけてくる。
家庭部か…。
「いいんじゃないか、何か長沢にあってそう」
「ほんと…!?」
「……うん」
あー……可愛…、ごほん。
天使みたいだ。
「それでね、明日部活でクッキー作るんだ。大崎、貰ってくれない?」
「え……貰っていいのか、俺なんかが」
「…大崎に食べてほしい」
そんなもじもじと恥ずかしそうに言わないでくれ。まじで可愛いな。
なんか俺……道を踏み外しそうで怖い。
とりあえず相槌を打とうとすると、横からバンッと机を叩く音が鳴り響いた。
振り向くと、昴が無表情でじっと俺の方を見ている。
「…早く帰ろう、真琴」
「あ…あぁ、わかった。じゃあな、長沢。クッキー楽しみにしてる」
長沢に小さく手を振り、先に教室を出ていく昴の背中を急いで追いかけた。
「待てよ、昴」
「……」
「待てって!」
昴の進路に割り込み、通せん坊をする。
俺の目に映る昴は切ない表情を浮かべていた。
「……忘れんなよ」
「え?」
「他の奴と仲良くしていても、俺のこと忘れるなよ。……寂しい」
「……!」
え……それって、ヤキモチ……?
まさかの…?
お、俺にこういう日が来ようとは…!
思わず喜びの声をあげたくなるが、ぐっと押さえて心の中に押し込める。
……ていうか、
「忘れるわけないだろ。さっきの授業中、昴の事ばっかり考えて大変だったんだからな。お前の方を何度見たか…」
「……へ…?」
昴が俺の発言を聞いて顔を赤くする。
え……照れるなし。何か俺も恥ずかしくなってきた。
「へ、変な意味じゃねぇからな?その、それだけお前の事知りたいんだよ。
だから早く部屋に案内して秘密にしてる事を暴露しやがれ」
「…ん」
照れ臭いムード中、二人で寮への道を歩いていく。
何故かこういうときって時間が進むのが遅く感じるんだよな…。
……所変わって、昴の部屋。
「……お邪魔します」
「どうぞ」
そろそろと足を踏み入れ、昴の後についていく。
昴の部屋は綺麗に片付いてると言うよりは、いい感じに崩れてるって感じだった。
アニメのポスターが壁に沢山張られている。
「あ、この作品知ってる」
「真琴、知ってるのか?」
「俺、割とアニメとか好きだし」
「よかったー…」
それにしてもこの部屋すごいな。
フィギュアや漫画だらけだ。
物色していると、昴が一冊の本を持って俺に近づいてきた。
「真琴……俺、真琴のこと信じてるから。この本、読んで」
「…?分かった」
漫画の表紙をめくると、男がボーイッシュな女の子を抱きしめてる扉絵が見えた。
見たことない漫画だなぁ……。
疑うことを知らない俺は、バカな事にページをめくっていってしまう。
その後、何が待ち受けているのかを知らずに……。
「え…………?」
ボーイッシュな女の子じゃなくて、男…だと?
あ……、あ、あああぁ……。
俺の眼下には男が自分のアレを相手のケツに突っ込む絵が映っている。
何でこの人、気持ち良さそうな顔してんの!?
プルプルと手が痙攣し始める。
何だ、この悪魔のような話は…………!
テンパっていると、急に真知先輩の言葉が脳裏に甦った。
"最初は痛いけどその後気持ち良くなるらしいよ。僕の抱いた子達はみんなそうだったし"
いや待て待て…!
言われたときは微かに想像したが、まさかこんなハードなものだったとは。
何?あの先輩、俺とこういう事したいのか?
抱きたいって言ってたし。
二重にショックを受け、倒れないように必死に意識を保つ努力をした。
「…真琴」
「……!」
昴の呼びかけでハッと我に返る。
「……昴…これ、何……?」
俺がそう聞くと、昴が目をそらしながらつぶやく。
「…俺の…趣味」
「……え?」
「男同士の絡み合いに萌えを感じる。それが、俺の趣味」
え…えっと待てよ?
じゃあ昴は本当は……。
「…ホモなのか……?」
「…違う!あくまで"見るだけ"なんだ。男同士のジャンルが好きなだけ。女同士の…百合みたいなのと同じ感じ」
「…あぁ…」
なるほど……。今の例えで何となくはわかった。
「……世の中、変わった趣味の奴はいっぱいいるんだなぁ」
今、まさにこの瞬間、それを感じた。
確かにその趣味で、今までの昴の奇妙な行動に説明がつく。
「……ひいた?俺の事嫌いになった…?」
「はぁ?ばーか。……まぁ、正直に言えば二割ほどはひいた。
けど正直に話してくれて嬉しかったから通算して0割。
俺が好きな元の昴だけど?」
「……っ、すげーオトし文句」
昴はそう呟くと、顔を赤らめる。
おい、照れてる場合じゃないぞ、まだ質問の答えを聞けてない。
「お前の趣味は受け止める。けど何でお前は会長の親衛隊に入ったんだ?」
「親衛隊は萌えの宝庫。あそこにいれば沢山の萌えに出会えると思って入隊した」
「へー…」
そういうものなのか?
「けどさ」
「うん?」
「俺、もう隊から抜ける」
「え、なぜ」
「……へへっ、ヒミツ」
昴はそう言うとはにかみ笑いをした。
"ヒミツ"って…気になるな。
すっかり安心した表情の昴と一旦別れ、自分の部屋に戻る。
昴……本当にすごい趣味してるな。
実のところ、あまりにも衝撃的過ぎて危うくちびりそうだった。
……ていうか、結局西條の奴、今日学校来てねぇじゃん。
部屋に入り、少し心配になったため西條の個室をノックする。……あれ?
「……開いてる?ってわああ!?」
後ろを振り向いた俺は思わず声をあげる。
西條は部屋の中ではなく、いつの間にか俺の背後に立っていた。
めちゃくちゃ怖いんですけど…。
「大崎、お帰り。今日は置いてかれてすごい悲しかった」
「わ、悪い…。ただいま」
「ねえ…大崎、お帰りのハグして?」
「な、何だよ急に」
ここは日本だぞ。
外国風の挨拶は拒否する。
俺がそう思ってたとき、西條が衝撃的なことを口にした。
「ずるい、あの女顔の奴は抱きしめてたくせに」
「え……」
女顔って…長沢のこと?何で……西條が……。
「授業中大崎が悩ましげな表情をしたり、三橋の奴をちらちら見たり。
そういや昼休みはどこに行ってたの?見当たらなかったけど」
「ひッ……」
何こいつ怖いんですけど。どこで俺の姿を観察してたんだよ。
「大崎に抱きしめられた女顔の奴をぶっ潰したい……ね、俺の事も抱きしめて?」
手をすっと伸ばしてくる西條を見て、思わず後ずさる。
お前いつから嫉妬するほど俺を好いてくれてたんだ?
ていうか、何でヤンデレってるんですか?
もう色々怖くてどうすればいいのかわからない。
だが何故か逃げてはいけない気がする。
逃げたら反対に爆発して酷い目に合いそうだ。
……よし。
「こい、西條……!」
俺の男気を見せてやろうじゃないか。
頑張って受け止めてやんよ…!
「……大崎…!」
「ぐえっ」
うり坊…いや、うり坊だと可愛すぎる例えか……?
西條がイノシシのように腹に突進してきたため、蛙が潰れたような声が喉から漏れる。
痛いんだけど。こいつ、加減って言葉知らないのか?
「……大崎…」
「よしよし」
すっかりデレデレモードになった西條をテキトーにあやす。
早く昴の奴、来ないかなぁ……。
ん?いや、待て待て。
昴って"あーいう趣味"だから、今の俺達の状態を見たらニヤニヤするんじゃないか?
昨日の副会ちょ…ハラゲーロと西條の絡みを見てニヤニヤしていた昴の表情を思い出してしまう。
……嫌だ!
俺で萌える昴なんか見たくない!
「おい、そろそろ離れろ」
「もうちょっと…」
「お前どれだけ温もりに飢えてるんだよ…!
あとでいくらでも抱きしめてやるから!だから今は離…っ」
ガタンと音がしたため、途中で口を紡ぐ。
振り向くと、少し目を見開いた昴が立っていた。
しまっ…、遅かったか。
しばらく沈黙の後、昴が口を開いた。
「……真琴、それ、どういう意味?」
「え……?」
顔を上げると、昴はニヤニヤするどころか、少し怒った表情をしていた。
「あとで西條のこといくらでも抱きしめてやるって…どういうことだよ」
「…え……えと、その…今とにかく離れてほしくて思わず口走ったというか…」
「思わずでそんなこと言うなよ。とくに真琴みたいな奴はつけ込まれやすいんだから」
「…、ゴメン」
…何だか少し怖い。
昴は怪訝そうな表情のまま近づいてくると、俺と西條をベリッと引き離す。
「真琴にあんまりべったりするな」
「うるさいな。何しようと俺の勝手じゃん」
「お前自分勝手すぎ。真琴の気持ち、少しは考えろよ」
「何だよそれ。三橋も三橋で真琴につきまといすぎじゃん。お節介って思われてんじゃないの?」
おいおい…。
おまいら修羅場化ですか。
「おい、ケンカするな「「大崎・真琴は黙ってて」…………」
ふん……いいもん、黙ってますよ。
別に拗ねてなんかないさ。
少し早いが夕飯食おう…昼飯食ってなかったからお腹空いた。
長沢のことで悩んでたときは空腹感を全然感じなかったけど。
……全てが解決して良かった。
ヤカンでお湯を沸かしながら長沢のことを思い浮かべる。
……クッキー楽しみだな。
熱湯をカップ麺に注ぎ、二人の様子をちらっと見ると、まだお互いにまくしたてていた。
あの二人のケンカ、確か俺が元で始まった気が…。
昴があそこまで怒っている理由はわからないが、心配してくれてるんだよな…?
……いい友達持ったな、俺。
心の中で呟き、カップ麺の蓋をピッと取った。
「……いただきます」
ちなみに乾燥ネギはあまり好きじゃない。
乾燥ネギは、千尋さんと一緒にカップ麺を食べてると、ピッピッて俺のカップによく入れてくる。
あれは単なる嫌がらせだと思います。
まぁ、乾燥ネギじゃなくても色んなものを食わそうとするけど…。
高いものとか食べさせてもらうとき、どういう反応すればいいのかわからない。
ずるずると麺をすすっていると、二人がようやく話にけりがついたのか「ゴメン」と口にする。
何であの二人最後にデレるのかな。
「……あれ?真琴何食ってんの!?」
「何って…見れば分かるだろ。カップ麺だが」
「そういう意味じゃない。いつから食ってたんだよ…」
ていうか食ってる事に気がつかないくらい言い合いに熱中してたのか?
大急ぎで夕飯を購買に買いにいく二人をのんびりと見送る。
別にそんなに急がなくてもいいんじゃないか…?この隙に風呂でも入ろうかな。
大浴場は行く気にはなれない。
何かまた面倒事に巻き込まれそうだし。
風呂から上がり歯磨きをしてから居間の方へ行くと、夕飯を食い終えた二人がテレビを見ながら寝転んでいた。
おまいら牛になるぞ。
「昴、洗濯」
「…え?あぁ、コインランドリーに行きたいのか。お金持った?」
「うん」
昴と一緒に、(西條は俺達の後を追いかける形で)コインランドリーへ向かう。
「…てか西條、お前、変装は?」
「もうやめた」
「はぁ!?バラすの早すぎ…!萌えが半減するじゃねぇか!」
「は?どういう意味?別に三橋には関係ないじゃん」
またケンカが始まった…。
西條は確かに変装しないほうがいいんじゃないかな。せっかくいい顔してんだから。
コインランドリーに着いてからも二人のケンカはおさまらない。
洗濯し終えた頃、三橋が「乾燥機もあるぜ」と一言口にした。
ここからまた新しいケンカが始まることになる。
「乾燥機……?」
お金……もったいない。
「部屋干しする。お金あんまり使いたくない」
「え……なら俺の洗濯物と一緒でよければまとめてやるか?」
「いいのか?」
「もちろん」
じゃあ遠慮なく。
昴に俺の洗濯物を渡そうとすると、横からガシッと腕を掴まれた。
「大崎、俺のと一緒に乾燥機にいれようよ」
「え……、気持ちだけ受け取っておく」
俺がそう言うと、西條が昴を冷たい眼差しで見つめた。
「あいつが…三橋が先に言ったから…?」
「え、まぁ、うん」
「そっか…。なら、なかった事にすればいいよな。三橋の洗濯物がなかった事にすれば、真琴の洗濯物は俺のと混ざり合う事になる」
おま…っ、言い方気をつけろ。
何か危ない発言に聞こえるし。
「三橋の洗濯物なんか…!」
「お、おい、俺のパンツ!」
西條は昴の洗濯物の中からトランクスを引きずり出し、床にベシッと投げつける。
「くそ…っ、西條!」
昴は負けじと西條の洗濯物を奪いとり、同じことをやり返す。
おいおい……まさか昴が簡単にのっちまう男だとは思わなかったぞ、信じてたのに。
「結局部屋干しか…」
洗濯物合戦をしている二人を横目に、俺はその場を後にした。
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