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腐れ縁(2/7)
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「……まこ…?」
「せ、先輩」
すみません、先輩。
むしろ感じてしまってすみません。本当にすみませんああああああ!!
「だ……じょ…ぶ……?」
「大丈夫です。最初から頭おかしいんです、俺」
「……ん。真知……も言…た…。まこ、おかしい子……て」
「な…っ」
俺が…おかしい…だと?
何度も思うが、真知先輩は本当に俺が好きなのか?結構な頻度で俺をバカにしてる気がしてならない。
「…真知……まこ、…大好き……。…まこの……話…い…ぱい……する…」
「そ、そうなんですか……?」
真知先輩は……はじめの頃は苦手意識があったけど、今はちょっと好き…かも。変な意味じゃなくてね。
ワンコ先輩は真知先輩のどこが好きなんだろ…?
「ワンコ先輩」
「……?」
「…は、真知先輩のどこが好きなんですか?」
「真知……何…も、できる…。
自分…意思、つらぬ…てる。……色…んな真知、好き…。小さ…とき…から、助け……もら…た」
ワンコ先輩はとぎれとぎれの言葉を紡ぎ、二人の小さい頃の話を聞かせてくれる。
一番伝わってきたことは、真知先輩が自分…つまり、ワンコ先輩を救ってくれた事。
幼なじみとして大好きだということだった。
目線)東雲 優
色んなこと…考えても、声に出すこと、できなかった…。
小さい頃から…発声が上手くできなくて、苦しかった。
ママには「心の病気だから、いつかは治るよ」って言われたのを覚えてる。
末っ子の僕は発声できない"良くない子"で、兄達は後ろ指をさしてきた。
他の金持ちの家の子供も…。
僕の家は、金満家の中では下流だったから、力あまりなくて言いなりだった。
保育園みたいに、ママが一時的に上流の人の小さい子供達を預かって面倒見てて…。
……そんな中、変わった人がいて……それが、真知だった…。
「……ねぇ、君、一人で何してるの?」
「……!」
話しかけられると思ってなくて…焦った。
他に子供達は沢山いるのに…。
僕はいつも隅っこで一人で座ってたから…。
真知は、すごく偉い上流の金持ちの子供で、みんな気を使ってた。
ママやパパに「あの子に失礼なことは絶対するな」と釘を刺されてた……から、話しかけられて心臓がドキッとした。
「…無視?」
「……っ」
違う…!って言いたくても、声に出せない…。
口を開きお腹に力をいれても出なくて……涙がじわっと出た。
このままだと、“無礼”になっちゃう…。
その焦りもプラスされて…涙、止まらなくなった。
「…何で泣いてるの?」
真知は…不思議そうな表情で僕を見下ろす。
突然、バタバタとこちらに駆け寄る足音が聞こえて顔上げると……ママが焦った表情で真知に説明してた。
ママは「優は話し相手になれないの、ごめんなさい」って代わりに謝ってくれた。
声を出せないことを知った真知は、興味無くして行っちゃうって…思ってたけど、僕の隣に座って言った。
「返事はいらない。だから黙って僕の話、聞いてよ」
……それから真知は、いつも僕の隣で喋り続けた。
真知の言ってること…小さいとき、難しすぎて理解できなかった…。
…今は、何となく分かる。
自分を置いて居なくなったママを、パパという形だけの存在を恨んで……“普通”の家族に恋い焦がれてたってこと。
…寂しいってことを。
真知は、聞くことしかできない存在の僕を…傍に置いてくれた。
真知がいたから、イジメられなくなった…。
声もちょっとずつ出せるようになって……パパとママが嬉しそうな表情してたの、覚えてる。
……年月が経って、僕は真知の身長、越した…。
そしてその頃になると、真知は"自分の気持ち"を口にしなくなった…。
「…誰も愛してくれないなら、自分から愛してもらいに行かないとね」
そんなこと言って、色んな人を抱いて…愛、求めはじめた。
僕は“今日あった出来事”を真知に話すこと…日課になった。
真知は聞き手、僕は語り手……昔と逆になってた…。
でも…最近になって、真知は急に他人のこと、沢山話しはじめた。
……まこの事。
他人に執着しない真知が、自分の気持ち…話してる。嬉しかった……真知の嬉しそうな顔、見て…。
今僕の話を聞いてくれてる、まこは…僕に見返り、求めない。
前、コンタクト落としたときも…"お礼なんかいらない"って言われた…。
真知もまこも、何も求めず優しくしてくれる…。
僕は…真知の傍にいれて幸せだけど、真知は僕をどう思ってるのか…知らない。
もしかして…ずっと嫌…だった…?
真知の気持ち、知りたい。
時々…真知、寂しくて僕を抱擁してきた。
…僕を必要としてくれてる…?
温もりをいくら感じても、言葉にしてくれないと…わからない。
ぽつりぽつりと僕の気持ちを伝えてると、まこがおずおずと…手を挙げた。
「……あの」
「な…に……?」
「話の途中、すみません。
ワンコ先輩は、その気持ちを真知先輩に伝えたことありますか…?」
「……?」
「えっと…声に出して、好きって言ったことがあるかということです」
声に、出して……好き?
「……言…て、…ない」
「もしかしたら、真知先輩もワンコ先輩と同じように悩んでる…んじゃないですか…?」
「同…じ……?」
「…ワンコ先輩は真知先輩と何か約束したこと、ありますか」
「ん………"ぜった…い、裏切ら…な…いで"…て」
「絶対裏切らないで…」
まこは…僕の言葉を、復唱する。
…どうした…んだろ…?
「…俺も真知先輩と同じ約束しました。"約束破ったら許さない"って釘を刺されて。
ワンコ先輩が一度も"好き"って伝えてないなら…真知先輩は、その、もしかしたらの話ですよ…?」
「…ん」
「真知先輩は、ワンコ先輩が"約束"で仕方なく傍にいると思ってるかも…しれないです」
「……!」
嘘……。
仕方なく、傍にいる…んじゃない…!
「そんな…」
「十分ありえると思います。
だって、ワンコ先輩だって心配なんでしょう?
真知先輩に必要とされているのか。
…ずっと小さい頃から傍にいても、それが分からなかったんですよね?」
「……」
「近すぎて、お互い言葉で好きって気持ちを伝える機会がなかったから……、真知先輩もワンコ先輩と同じで心配なんじゃないですか…?
"約束がないと、優は傍に居てくれない"…って」
近すぎて……言葉、交わし合わなかった…。
真知も…僕の本当の気持ち、知らないの…?
……なら…。
「伝え…たい…。約束…無…ても、傍…に…居る……………"友達"…だって…」
「…え?友達じゃないんですか?」
「ん……よく…分か…ない…。ただ……傍…居た、だけ…」
「え、ちょ…、なら本当に勘違いされてるんじゃ」
「早…く、伝え…な…と」
「昼休みになったら真知先輩、来ると思うんで……そのとき言ったらいいと思います。何年も積み重ねてきた気持ちを」
「何…か……恥ず…しい…」
照れ…くさい。緊張、する…。
「ど……しよ…」
「ふ、ファイトです…!」
「ん……」
栄養…補給、したい。
まこの傍に寄ると…まこが不思議そうな顔する。
そんなまこの首筋に…後ろから顔、うずめて抱きしめた。
まこはびくつくと眉をしかめて、僕の方……見てくる。けど、慌てた様子で…笑み、つくった。
「く、くすぐったくて、あはは……」
本当は……嫌…なのかな…?
けど、まこの優しさに甘えて、ぎゅっと抱きしめる…。
…いい匂いで、あったかい…。
まこ……一緒いると、落ち着く…。
「…わ、ワンコ先輩は」
「……?」
「真知先輩が大好きなんですね。幼なじみっていいなぁ…」
「ん……でも…依存…てる、かも」
「依存…?」
まこは呟くと、言葉で表せない様な…不思議な微笑、した…。
「まこ……?」
「俺も…自分を変えてくれた人に、依存してるかなって。
新しい自分に出会わせてくれた人は、特別な存在になりますから」
「ん……」
まこ…も、変えられた…?
前は…どんな人…だったんだろ…。
「あの、もう一つ…聞いていいですか?」
「…、なに…?」
考えてる途中に…話しかけられたから、考えるの…中断する。
まこは、言いにくそうな表情で…聞いてきた。
「…真知先輩の、お母さんの“居なくなった”って、どういう意味ですか…?」
まこは…聞いたけど、すぐに慌てた様子で、謝ってきた…。
「ご、ごめんなさい、ワンコ先輩に聞くことじゃないですよね…本人がいないところで聞くのもやな感じだし。
今の、聞かなかった事にしてください」
「……」
聞く、てことは……まこ、真知に興味持ってる…?言うべき……?
迷っていると、後ろから突然…聞きなれた声が僕の背中を撫でた。
「僕のママは、お父さんの愛人だったんだよ」
「……!真知先輩…」
「真…知……」
振り向くと、真知が軽い微笑を浮かべて立っていた。
心臓が…強く、波打ちはじめる。
言わなきゃ……僕の気持ち…。
ちゃんと…伝えなきゃ…。
目線)東雲 優 end.
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