アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ep28
-
俺が攫われた騒動から数日何事もなく日常は進んだ。
ただ変わったことと言えばいつも俺を虐めてきてきた奴らが全然来なくなったこと。
「...平和だ」
怖いくらい平和だ。
これが普通の高校生活ってやつか...いや普通は友達の一人や二人いるだろうけど...。
藤吉君は友達じゃなくて...恋人...だし...。
藤吉君はあんなに暴れて数人病院送りにしたのに先生に呼び出された様子はなかった。
「あ、あの、多田君」
ぼーっと考えてると突然前から高い声で話しかけられた。
声をかけてきたのは同じクラスの笹山さんで、赤茶色の髪を二つ結びにした女の子だった。
「いきなりごめんね...あの、今度の文化祭のことなんだけど...」
「文化祭...?」
「うん、私たち喫茶店で決まったんだけど、あの時多田君いなかったから一応伝えたくて...」
「そうなんだ...ありがとう笹山さん」
一体いつ決めたんだろう...俺がいなかった時だから空き教室に呼び出されてお金を全部取られた日かな...?
「それで...多田君も参加できるよね?」
「あぁ...うん、できるけど...」
「そっか、よかった!」
笹山さんは安心したみたいな嬉しそうな顔で笑った。
俺もなんだかちょっと嬉しくなった。
「私、実行委員になったはいいけど色々不安で...へへ、多田君きっと似合うよ、執事!」
「し、執事?」
思わず聞き返すと笹山さんはキラキラした目で「うん!」
と元気よく返事した。
俺、執事の格好するのか...?似合うわけない...。
「大丈夫!私も執事やるんだぁ!」
「いや、そういう事では...」
見当違いの言葉に苦笑した。
ていうか女子も執事をやるんだな...。
あっ、そうだ、藤吉君のクラスは何をやるんだろう?そもそも参加するのかな...。
後で聞いて...
「たーだー?」
「わっ!?」
「きゃっ!?」
いきなりひょっこりと出てきた藤吉君に俺も笹山さんも悲鳴を上げた。
「おはよ」
普通に挨拶してきた藤吉君に「おはよう...」と返すとにっこり笑って藤吉君は笹山さんを指さした。
「んで?コイツだれ?」
「へ...?わ、私...」
「さ、笹山さんだよ...文化祭のこと教えにきてくれたんだ」
「あぁ、そう...」
藤吉君は目玉が氷で出来てるんじゃないかってほど冷たい視線をぷいっと逸らしてムスッとした表情になった。
笹山さんは固まってる。
それはそうだ。藤吉君といえばこの学校のほとんどの生徒が知ってる不良なんだから怖がるのも仕方ない。
...本当は優しいんだけど。
「多田」
「はい...!!」
「昼おれの教室な」
「は、はい...?」
超絶不機嫌そうな顔で藤吉君は言うだけ言って教室を出ていった。
残された俺と笹山さんは顔を合わせてほっと息を吐いた。
「...び、びっくりしたぁ...」
「笹山さん...なんかごめんね...」
「ううん、大丈夫!」
笹山さんは何事もなかったかのように笑った。
「私、多田君と話してみたかったしよかった!文化祭がんばろうね!」
「うん...」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
28 / 39