アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
チグハグ兄弟 4
-
緑のネクタイは一年生。
その一年生が入っていったということは、残念ながら同じ一年生である俺の部屋ではないのだ。
もう一度目の前の扉に目を向ける。
表札には、やはり402号室、と汚い字で殴り書かれていた。
殆どペンキが剥げたプレートに年季を感じる。
俺が嫌そうにそれを睨みつけていると、慌ただしい足音とともに扉が開いた。
「今日から同室になる子かな?ごめんね、びっくりさせちゃって。あれ?君って今朝の……」
「どちら様ですか?」
「…………えっと」
「どちら様ですか? あ、俺が部屋を間違えたようですね。それでは」
自分でも寒気がする笑顔を浮かべつつ、俺はそそくさとその場を去ろうと、
「ちょっと待った」
したところで引き止められた。くそ。
地面に叩き落とすように腕を振れば、緩く掴まれていた手は簡単に離れる。
「何か用ですか」
「今日から俺の同室になる、幸村紫樹くんだよね」
「人違いです」
「さっき会ったじゃん」
死んだ魚のような目をしているだろう俺に頓着せず、金髪の男が笑いかけてくる。その顔、潰したくなるからやめてくれる。
慌てて服を着たらしいが、汗に濡れた髪や肌、殆ど開いたままのワイシャツのボタンや外れたベルトから、ついさっきまでの行為の名残が滲み出ていて、非常に気分が悪い。
俺は軽蔑の目でそれらを一瞥し、まだ何か喋っている男を無視して部屋に足を踏み入れた。
熱気のこもった部屋をうんざりしながら見回す。
室内にはもう一人男がいて、ベッドの上、やけに高慢そうな瞳と目が合った。その視線が俺のネクタイに落ちる。
「一年か。気が利かない奴だな。普通、最中に入ってくるか?」
半裸のまま二段ベッドの下段に腰掛けた男が、偉そうに腕を組んだ。
他人がいるというのに、服すら着ずに堂々と居座っている姿に逆に関心する。随分太い神経をお持ちのようで。
「そう言われても。今日からここは俺の部屋なので」
努めて感情を表に出さぬよう、平坦に言った言葉が気に入らなかったのか、男は瞳を細めて立ち上がった。
「まぁまぁ涼(りょう)さん、落ち着いて。こいつ、新入生なので年上の敬い方を知らないんですよ。これからきちんと俺が教えます。……確か涼さん、今日は仕事がまだ残っているんでしたよね。また明日にでも会いましょう」
男が口を開く前に、俺との間に瀬良が立ちふさがった。
奴は相変わらずのヘラヘラした笑みを浮かべて、床に落ちていた白いシャツを手渡す。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 17