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チグハグ兄弟 5
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「……お前がそう言うなら仕方ない。おいてめぇ、今日邪魔したこと覚えてろよ」
男は一瞬だけ表情を柔らかく緩めたが、俺に肩をぶつけて部屋を出て行った。
好きで邪魔したわけではなく、俺は自分の部屋に入っただけなんだけど。
むしろ迷惑なのはこっちの方だ。
俺は鼻をつまみながら早足で部屋を横切って、窓を開け放した。
熱がこもった空気の悪い部屋に、爽やかな風が入ってくる。
「先輩」
「なにー?君、眉間の皺が凄いことになってるよ?将来そのままで凝り固まっちゃうよ?」
「兄弟交換(チェンジ)して下さい」
「えー、随分早くない?もう少し俺と過ごしてみてからでも、」
「結構です。大体分かるので」
「……もしかして、意外と奥手なの?可愛いね」
「は?」
笑みを含んだその言葉に、無表情のまま振り返った。何頭沸いたこと言ってんだこいつ。
瀬良は香り立つように妖艶な笑みを浮かべた。
「さっきも生ゴミを見るような目で俺を見てたけどさぁ、君にも欲はあるでしょ? この学校って男しかいない上に外出しにくいけど、溜まるものは溜まるじゃん。その点、男同士ならお互い何の弊害も遠慮もなく発散し合える。ほら、良いこと尽くしだよ」
「…………俺はあんたみたいな人間が一番嫌いだ」
俺は言葉と裏腹に、薄く唇の端を引き上げた。
「酷いな。俺は君のこと、嫌いじゃないよ?」
瀬良がゆっくりと目線を上げて俺を覗き込んだ。
底無し沼みたいな深淵の瞳が、じっと誘うように見つめている。
その暗い色と視線はやはり不愉快で、俺はすぐに目を逸らした。
「今すぐ兄弟交換(チェンジ)しましょう」
「……残念だなぁ。でも君がそう言うなら仕方ないね」
ちっとも残念そうに見えない瀬良は、相変わらず笑みを浮かべていた。
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