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誤算.5
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それから結局俺は、毎日役員全員分の仕事をしている。
たかが2週間。
されど2週間。
それだけの期間、役員全員の仕事を1人でやり続けるのは、言わずもがなキツイ。
単純計算にしたとして、仕事は4倍。
そろそろ体育祭も近付いてくる。
そうなれば、仕事は一体普段の何倍か。
……考えただけで、頭が痛い。
「……はぁ。そろそろ授業免除でも使うか」
他の生徒会の奴らはよく授業をサボるが、俺は可能な限り授業には出るようにしていた。
だから、ここにくるのは朝早くと放課後。
残ったものは持ち帰る。
それが俺のルーティンだった。
まぁ、妥当だろう。
機密書類も当然あるため、教室で仕事なんて論外だからな。
しかし、あいつらが来なくなってから、昼休みもここに来るのは勿論、朝来る時間もさらに早める羽目になり。
食事の時間も、それに伴って、量も削るようになり。
寝る時間も遅くなった。
それだってこの時期だから、"このくらいで済んでいる"わけで。
…………体育祭の準備が始まれば、いよいよ、シャレにならなくなるだろう。
外を見れば、視界に入るのは、雨。
「梅雨、か…」
しとしとと降り続ける雨は、見ていて気分の良いものではない。
頭の奥が痺れるように痛んで、机の上に出して置いた頭痛薬を乱雑に取り出し、噛み砕く。
水を持って来ることさえ億劫だった。
「あー……。めんどくせぇ…。」
何故俺がここまでやらなければならないのか。
机に突っ伏して、目を閉じ、ひとりごちる。
…………もうこのまま、授業をサボってしまおうか。
本来なら忌避したいところだが、今はもう昼休みだし、残りの授業はほんの2つだ。
どうせこんな状態じゃ、集中して授業を受けることすら叶わない。
「……ぃ」
ここにいれば、少なくとも移動はせずに済む。
書類も、量はあるが単純作業なぶん、授業よりはいくらかまともにできるだろう。
「ぉ………ぃ」
あぁでも、それなら、
「……ぉい!」
きょうしにれんら「おい!!!」
突然耳元に響いた怒声に驚き、顔をあげる。
脳みそがグラリと揺れたような感覚がしたが、どうにか堪えてそちらに目を向けた。
「………なんだ、てめぇか」
俺のすぐ近くに立っていたのは、風紀委員長の、武川蓮。
こいつは、俺と同率で“抱かれたいランキング”1位だった男だ。
騒がれるだけあって、成績優秀でスポーツもでき、顔だって悪くない。
しかし、シャツは第二ボタンまであけられ、耳にはピアスが複数。その風体は、とても風紀委員長とは思えない。
「なんだ、じゃないだろ。何回呼んだと思ってる。」
不機嫌そうにこちらを見て、ズイッと顔を近付けてくるのに、少し後ずさった。やたら距離感の近いこいつは、あまり得意ではない。
「仕事中に居眠りとは、随分なご身分だな?」
目を眇めてこちらを見てくる武川は、役員に負けず劣らず俺が嫌いだ。
恐らく今も、俺が“可愛い子たち”と仕事に響くほど"遊び惚けてた"とでも考えているのだろう。
目には軽蔑の色が浮かんでいる。
「お前は校内の風紀を乱したりはしてねぇから、わざわざ関与しねぇが、程度位わきまえろ」
案の定そんなセリフを吐いた武川は、呆れたように溜息をこぼした。
他の役員が仕事をしてないなんて、夢にも思っていないのだろう。
あいつらは賢いから、きっと悟られるようなことはしない。俺がなんだかんだ自分たちの仕事もやることも見越していたのだろう。
…………いや、自分の評判を下げちゃマズイから親衛隊にやらせているとでも思ってるってとこか。
まぁ、人望にせよ、信頼にせよ、単純な人数にせよ、向こうが上なんだ。
俺があいつらは仕事をしていない、なんてぼやいたところで、一体誰が信じるというのか。
なんだか口を開くのも億劫で、ただぼんやりと武川の方を見つめる。
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