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思惑.2
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薫が戻ってきた。
それも、拍子抜けするほどあっさり。
授業がおわって、いつものように、放課後、生徒会室にむかうと。
「やっほ〜〜」
そう、いた。
いたのだ、普通に。
「は……?」
思わず固まっていると、後ろから声が聞こえた。
「入り口でとまってんじゃねぇよ、邪魔だ」
「あれ?どうしたんですか?」
「……。」
どうやら、全員揃ったらしい。
「いや、薫が」「あっれ〜〜??なんで一年が、ここにいるの?」
「「「は?」」」
「あ、副会長おひさ☆
もう十分って位遊んだし?そろそろオレも真面目にやろうとおもって、もどってきたんだよね〜」
へらりと笑う薫に、気まずそうな様子は全くない。
面の皮が厚いにもほどがある。
呆れ果てて、怒ることすら面倒くさくなった。
まぁ、もどってきただけマシと言うべきか。
「転校生は、もういいのか」
ただ、気になったのはそれだけだった。
役職を放棄するくらいに気にいっていた転校生を、そんなにあっさり手放せるものなのか。
「ん〜〜、ま、しょうがないよねぇ」
一体何が"仕方ない"のか。
曖昧にそういう薫の目は細められたままで、その瞳から真意は汲み取れそうもない。
「っつーか、てめぇ、何しれっとそこ座ってんだよ、一言ぐらい謝りやがれ」
のらりくらりとした薫の様子にしびれを切らしたのか、伸也が怒鳴る。
「は〜〜?ふくかいちょーに言われる義理はないとおもうんだけど。まぁ、でも、ごめんね〜、今日からはちゃんとやるからさ〜」
ヘラヘラ笑ったままこぼされた謝罪に、柴山と光毅からも、不穏な空気を感じる。
はぁ。
思わず、口から溜息がこぼれた。
…………めんどくせぇ。
「あー、もういい」
「は?」
「はい?」
「はぁ?」
馬鹿みたいに重い空気がうざったくて、髪をかき混ぜる。
「………そんな謝罪ならべつに欲しくもねぇ。」
その声は、静まり返った生徒会室に、思いのほか、響いて。
けれど、今なんど謝罪させたところで、形だけととのえたところで、こいつの根本にあるのは、同じ感情なわけで。
つまり、そんな謝罪に、価値なんてない。
心無い謝罪は、謝罪しないのと一緒だ。
……いや、むしろ、それよりひどい。
「んなもんに時間割くくらいなら、一枚でも多く書類捌け。お前が仕事さえするんなら、べつに何考えてても、俺には関係ねぇよ」
薫の態度は最悪だが、それでもこいつが有能なことにかわりはない。
何を考えているのかは知らないが、それでもなにか、れこいつなりに考えるところがあって、戻ってきたんだろうし。
それで他の3人の負担が減るなら、もう、それでいい。
一瞬、生徒会室に沈黙が舞い降りた。
「……やっさし〜、さすがはかいちょー。寛大な処置をドーモ」
その沈黙を破ったのは、やはり薫で。
いつも通りのやたらと軽い声音は、それゆえに不自然に空気を揺らす。
ーーーその日の放課後は、昨日までとは打って変わり、静かなまま幕を閉じた。
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