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歪み.8
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ーーーーかわ……う……
ーーーー事故だった……う?
ーーーーーでもなんで、…………け?
ーーーーー…れ……も、…………らし……
ーーーーじゃあ、それって………………
ーーーーー……だ…………ったのにねぇ。
ーーーーーーーーかわいそうに。
ざああああああああああ。
「……………………ッ!!!!」
は、と呼吸が詰まって、脳を締め付けられるような痛みに、目がさめる。
「………………はぁ、」
荒い息の間にこぼしたため息は、湿度の高い空気に紛れていく。
こうして目を覚ますのは、今日だけで何度目だろうか。
「………………」
苦しくて、眠たくて、苛だたしい。
だけど、それに安心している。
ーーーーよかった、まだ俺は、俺だ。
忘れてなんて、いない。
忘れられる、はずがない。
まさか息苦しさが、楽に呼吸できるよりずっと心地良いと、そんな風に思う日がくるとは。
…………マゾかよ。
自然と自嘲の笑みが溢れる。
それでも、安穏と過ごせることは、どうしたって俺を不安にさせるのだから、どうしようもない。
「………………」
変に高ぶる鼓動と、クリアになってしまった視界。
ずしりと重く感じる腕で目元を抑えても、もう一睡もできそうにない。
むしろ、真っ暗なのに、かえってその暗さでさらに目が冴えていくようで。
「…………はぁ。
……外、出るか」
外を見れば、もう雨はほぼ止んでいるものの、早朝の曇り空はやはり相当暗く、濁っている。
それを横目に部屋着のまま、あてもなく歩き出した。
なんの目的がある訳でもないから、向かう先も当然適当だ。
ただ行ったことのない場所に向かって、歩いて行く。
暗い空の下、兎に角、暗く狭い道に向かって、ひたすらに。
歩きながら、こんな風に探索するのは初めてだな、とそんなことをぼんやりと考える。
興味も時間もなかったから、こんな散策はしたことがなく。
したがって、無駄に広いこの学園の裏庭は相当に入り組んでいて、どこに繋がっているのか、想像もつかない。
いっそ終わりがないのかと思うほどだ。
それでも歩き続ければ、終着点は当然存在するわけで。
最後の枝葉をかきわけると。
「………………!!」
ーーーーーそこには、溢れんばかりの紫陽花が咲き乱れていた。
吸い寄せられるように、紫陽花のもとに足が向いて。
そっと手を伸ばして紫陽花に触れれば、紫陽花は花弁にのる雨の雫を煌めかせていた。
梅雨にしか咲かない紫陽花。
咲いたかと思えば、すぐに朽ちてしまう、そんなほんのひと時しか、輝けない花。
ーーーそれなのに、その紫陽花が咲く様は、こんなにも力強いものだったのか。
花になんて興味がない俺が思わず魅入ってしまうほどに、その紫陽花は不思議な引力を持っていた。
ぽたり。
紫陽花から溢れた雫が手のひらに溢れる。
雨は、好きじゃない。
それでも。
「…………きれい、だな」
この紫陽花から溢れた雫としてみる雨は、なんだかいつもの雨とは違う気がした。
さらに紫陽花をよく見ようと、足を踏み出した瞬間。
ーーーージャリ。
背後から地面を踏みしめる音がした。
ーーーーーーーー
70000アクセス、ありがとうございました!
関連イラストに一年生コンビ(光毅と柴山)のイラストを投稿させていただきました。
下手くそですが、もしお時間あれば、よければ見てやってください♪( ´▽`)
いつも本当にありがとうございます!
2018.7.1 佐久田
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