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「っっ…」
やばい、やばい、やばい。
集合場所に向かって歩きながら、俺はその振動のせいで、どんどん大きくなっていく快感の波に、冷や汗をダラダラと流していた。
「っ、ん…ふ」
ぐっ、と握り締めた拳と、ぎゅっと噛み締めた唇が震える。
やばい。これは絶対にヤバイやつだ。
もぞもぞと擦り寄せる足の真ん中に、熱が集まってくる。
っ…。
俺は前屈みになりながら、必死に快感をはぐらかしていた。
「翼?おまえ、本当に大丈夫か?腹痛い?」
入場門から、いざフィールドへ、というところで、豊峰が俺の異変に気付いて声を掛けてきた。
「っ、う、うん、だい、じょうぶ」
もうここまで来たら、さっさと競技に参加して、こんな背徳的な快感は忘れてしまうに限る。
フルフルと首を振る俺に、豊峰は心配そうに、「無理するなよ」と笑ってくれた。
「っしゃぁぁ!行くぞーっ」
紅組団長が、気合いの掛け声と共に、フィールドに駆け出して行く。
選手たちがそれに続いていく中、俺もヨロヨロと、前の生徒についていった。
「っ、はッ、んっ…」
軽く走ったせいで、またローターの位置が変わった。
前立腺をギリギリ掠める危険ゾーン。
やばい、無理、早く終わって…。
すでに腰が抜けそうになっている身体を必死で保たせて、俺はみんなの動きに倣って、綱の横にしゃがみ込んだ。
中央にいる主審の手が持ち上がる。
ピストルが、パァンッ、と音を立て…。
「うぉぁぁぁー!」
「引けぇーっ!」
「フレー!フレー!」
ワァァッ、と上がった歓声と掛け声で、会場が一気に熱を孕む。
俺も、みんなに合わせて手にした綱を思い切り引っ張って、腰を落として力を入れた。
その瞬間。
「っあぁ!」
やばいーっ!
ぐっ、と下半身に力を入れたせいで、ナカのローターを思い切り締め付けてしまった。
「っ、だ…め」
ビクッと震えた身体から、ヘナヘナと力が抜けていく。
っ、あ、あぁぁ…。
もう駄目だ、と思ったのと同時に、手がふらりと綱から離れる。
火宮さんっ…。
助けて、と浮かんだ名前は、こんなことになっている元凶の人で。
な、んで、俺…。
こんな目に遭っても、俺が1番に縋るのは火宮なんだなぁ、と思ったら、可笑しくって笑えてきた。
そのとき、パァンッと銃声が聞こえ、周囲の生徒たちが、パッと綱から手を離して、歓喜に湧いた。ワァァッ、と喜び飛び跳ねるのは、紅組の生徒たち。
「翼っ、やったな!」
あぁ、こっちが勝ったんだ…。
快感にジーンと痺れた頭で、ぼんやりと理解する。
フラフラと引いた足がもつれて、身体がガクンと地面に崩れ落ちた。
「翼っ?!」
慌てたような豊峰の声が聞こえたけれど、もうそれに応える気力はない。
願わくば、どうか助け起こしたりしないで欲しい。
もし近づかれたら、俺のハーフパンツの前が勃ち上がってしまっていることに、気づかれてしまう。
「翼っ、大丈夫かっ…」
救護テントへ…と叫ぶ豊峰の声が終わらないうちに、スッ、と誰かの影が落ちて、ふわりと身体が浮いた。
「っ?!」
ふぁさぁっ、と、横抱きにされた身体に、優しく掛けられたのは、見知ったジャケットで。
「え?え?」
「ククッ、限界か」
ニヤリ、と意地悪く笑う火宮の顔が、すぐ間近に見えた。
「っーー!な、んで…」
競技中の俺の側に。
「ふっ…」
片頬だけを器用に持ち上げた火宮が、答えを教えてくれることなく俺から目を逸らし、ぐるりと周囲を見回した。
「道を開けろ。こいつは俺が運ぶ」
途端に、「キャァァァ!」とか、「ヤバイーッ!」とか、耳をつんざくような甲高い悲鳴が周囲で上がったのが聞こえた。
ギクリとして周囲を見回せば、綱引きに参加していた生徒も、その向こうの応援団も、観客も応援席の生徒もみんな、火宮と火宮にお姫様抱っこされた俺に注目していた。
「っ、これって…」
仕返しだ、ということは、考えなくても分かった。
「も、本当、バカ…」
こんな意趣返し。
これが初めから計算の内なんだとしたら、本当にこの人の報復センスはあっぱれだ。
お仕置き、ね…。
ローターを入れたことだけがそれかと思ったら、まさかこんな当てつけるようなことまで目論んでいただなんて。
「本当、天才的ですよ」
あなたに悪巧みをさせたら、誰も敵う者はいないでしょうね。
真っ赤になっているだろう顔を、ぎゅっ、と火宮にしがみつくことで隠す。
「ククッ、翼。おまえが選んでいいのは、俺だけだ」
「ん…」
分かりました。反省してます。
「だが、これだけで終わりではないぞ」
耳に囁かれた意地悪な台詞に、ビクリと身体が震える。
「ほら、翼。保健室はどっちだ?案内しろ」
「っ…」
なんで救護テントじゃないんだ、とか、鍵はどうする、とかはもう愚問だろう。
「ククッ、密室で、じっくりと、仕置きの仕上げとコレの手当てだ」
あぁぁぁ。本当、もう、この人は。
にぃ、っ、と妖しく笑った火宮に、俺は逆らう術など見つからなかった。
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