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過去の苦痛と愛の決断⑨
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それから長い月日がたった。
夏樹は孤児院の子供を2人育てることにした。
名前は遼河と満留。
2人共とても人懐っこく、すぐに夏樹に懐いてくれた。
3人でお出かけしたり楽しい思い出をたくさん作った。
まるで、紫を忘れさせるように。
2人は笑顔がとても可愛く、愛くるしかった。
そんな一見平和な日常に影が刺した。
ある雨の日。
一本の電話がかかってきた。
「もしもし、嵜元です」
「もしもし、島崎翠です。お久しぶりです。」
電話の相手は学生時代、紫のことを教えてくれた翠だった。
ほとんど忘れていたが、声を聞いてすぐにわかった。
「ど、どうしてあなたが…?」
不思議に思い問うと翠は
「いまからあなたに会えませんか?紫についてお話があります」
紫の名前を聞いてびっくりした。
そして同時に嫌な予感がした。
「わかりました…近くのファミリーレストランでいいですか?」
と言うと翠は
「はい。一人で来てくださいね」
と言い電話を切った。
受話器を置いた夏樹はそっと家を抜けた。
車を走らせること数分。
指定したファミリーレストランに着いた。
車を置き、ファミリーレストランの中に入る。
すると見覚えのある人が窓際の席に座っていた。
サラサラでとても長い黒髪。
大きな漆黒の瞳。
あの時と何一つ変わらない姿がそこにあった。
「久しぶりです、翠さん。遅くなってしまってすいません。」
「いいえ。私も今ついたばかりです。おかけになって。」
翠は自分の正面の椅子を指さす。
「はい」
そっと椅子に座り翠を見る。
「夏樹殿を呼んだのは紫様についてお話があるからです。」
「はい。」
「紫様は昨日、
自殺されました。」
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