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涙でくしゃくしゃの顔に懇願され、榎野は小さく舌打ちした後で汗だくの指同士を絡めて、シーツの海に沈めた。
だからこそ、行為が終わった後に楠田がすぐ寝てしまったのは後輩として寂しかった。ならば、朝に話そう…と思った矢先。
(朝、目覚めたらベッドの隣はもぬけのカラってオチで…。)
やっとこさ、携帯で連絡を取り合って意中の相手を捕まえたと思ったら、『付き合わない』『絶対に嫌』、のコンボときた。
(俺だって、自分が男に興味あったなんて初めてわかって動揺しているのに。)
潔いほどにフッてくれるな、と考えていたら、例の女性店員が私服姿でテーブル席にやってくる。
「あ、あの…。」
「ああ、待っていたよ。」
近寄ってきた彼女の手をとり、自然な流れで互いの指を絡めると王子面は颯爽と立ち上がる。
「う~んと、手始めに名前を訊いていい??ああ、あと。この後どうしようか、決めなくちゃね。俺が君とどこまでいっていいのかも…。友達??それとも…恋人??」
言いながら、レジの前まで歩を進めた…直後だった。
「…とりあえず、いっぺん死ね!!」
「え。」
榎野が声に反応して振り返るのと、小柄な先輩が片拳を下ろしたのはほぼ同時だった。鈍い音がして、隣にいた女性店員の口から甲高い悲鳴が漏れる。
「…だから、お前とは付き合えないって言ったんだよ、このチャラ男!!」
じんじんと疼く右頬に手をやり、榎野は気怠げに声の主を見遣る。
「楠田先輩…。」
楠田は肩で息をしながら、怒りに頬を赤く染めていた。
「…お前の付き合うっていうのはさ、結局そういう、身体目当てのお話だろ!?使い捨てのカイロみたいなもんだ。使えなくなったら、ポイ捨てして終わり。」
俺はそういうの真っ平御免なの、と眦をつり上げて先輩は怒鳴る。
「付き合うなら、誠心誠意。百歩譲って、お前の性別は忘れる。けど、一途な奴がいい。」
一気に捲し立てると、楠田はヒラリと踵を返して、店の出入り口へと向かっていく。
「…悔しかったら、俺様が『好きだから捨てないで』って縋り付くくらい夢中にしてみろっつーの!!」
一人残された王子は、患部を手で押さえたまま、呆然と立ち尽くしていた。…我に返った女性店員が、ハンカチ片手に駆け寄ってくる。
「大丈夫~??なにアレ~…。」
楠田が去っていった方を睨みつける彼女からハンカチを受け取り、後輩は緩々と口を開く。
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