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「…ああ、なるほど。」
余裕綽々なフリで、卓上に頬杖をつき、意味ありげな頷きを繰り返す榎野。
「楠田さん、”未経験”だから、“あ~ん”もできないんだ。へぇ~??」
短絡的な年上は、まんまと罠にかかって顔を上げ、後輩相手に凄んでくる。
「あ゛ぁ゛ん!?」
榎野は視線をメニューに移し、関心が薄い体を装う。
「…だって、だから”あ~ん”の一つもできないんでしょう??」
後輩からの嫌味に楠田は口を開きかけ…途中で閉じる。すっと一切の表情を消した先輩は、頭を傾げ、榎野に訊く。
「なら、ケーケンホーフな榎野は、できるんだろ??」
すんなり騙されてはくれないな、と内心舌打ちをしつつ、後輩は外見鷹揚に頷く。
「もちろん。」
それなら、と言って、楠田は後輩同様、パスタをフォークに巻きつけ、相手に差し出す。
「…”あ~ん”。」
楠田の声と共に、後輩が椅子から腰を浮かせた。フォークの先に齧り付く後輩は、誘うように底意地悪くニヤリと笑う。
榎野は席に戻ると、おや、と目を見張る。放心している楠田の、フォークを持っている方の手首をむんずを捕まえると涼しい表情をする。
「…失礼。どうやら、俺の食べ方が悪いセイで、ソースが飛び散ってしまったみたいですね。」
早口に言ってのけると、相手の腕を無理矢理近寄せると、自らの舌をべったりと這わせていく。
鈍感な楠田でも、後輩の演技は見え見えだ。やめろ、と小さく叫んで、手を引こうとする。が、榎野の力が強いのか。捕まえられた楠田の腕は少しも動じない。
「榎野…っ、榎野って!!…こんなとこ、誰かに見られたら…。」
本日何度目かわからない赤面をする先輩に、榎野は艶がかった瞳を動かす。
「見せつけてやればいいんですよ。」
「榎野…ッ!!」
楠田の困り果てた声に、思うところあってか。後輩は交換条件を提示してくる。
「止めて欲しいですか??じゃあ、次回からお互いに“あ~ん”しあいっこしましょ。」
まさかの条件に楠田は『はぁっ!?』と素っ頓狂な悲鳴をあげる。
「嫌ですか??…じゃっ、いっただっき…。」
口を大きく開く相手に、楠田は急いで約束する。
「わ、わかったわかった!!次から、食事中に“あ~ん”なっ!!やろうやるわやりたいわ!!」
ガクガクと頭を縦に振る先輩に、榎野は言った通り彼の腕を解放する。
「分かればいいんです。」
ニコニコと笑う年下男に、お前、さては悪魔だな、と楠田は低く唸る。
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