アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
縋る(不本意)
-
逃げの体勢に入ったって、高槻と御手洗相手に逃げられるはずがなく。
散々暴れた末に、俺は高槻の腕の中で揺られていた。
ものすごく不本意ながら横抱きに抱かれ、頭からバスタオルを被せられている。
確かに、外から見たら誰が高槻に運ばれているかわからないだろう。
でもこれは………いたたまれない。
「あ、高槻何やってんの?」
突然大きな声がして、俺はびくりと震えて固まった。
この声は……今朝教室にいたバカのひとりだ。
確か名前は飯田。
「いや、お前こそ何やってんの?授業中だろ?」
「俺は忘れ物取りに来た!つか、お前サボりじゃん」
「そーそー、気ままにサボりー」
くそ、何でこのタイミングでいるんだよ飯田!
今朝も忘れ物取りに行ってたろ!
おかげで俺は正体がバレたわ!
「で、そいつだれー?」
飯田が近づいてくる気配がして、俺は反射的に高槻の制服を掴んだ。
高槻たちだけじゃなく飯田にもバレたら、俺はもうシロとして活動できない。
そう思うと、緊張で自然と体が竦む。
「んー、なんか怪我してたのを拾った」
「拾ったんかい…」
「かわいそうだったからさー」
雑談なんかしてんなよ!早く行け!
「良かったなーお前、イケメンに拾われて」
飯田に話しかけられて、俺はますます身を竦めた。
今にも、飯田がバスタオルをめくって俺の顔をみるんじゃないか。そう思うと、怖くてしょうがない。
早く、と縋るように、高槻の制服にしがみ付く。
俺を支える手に、少しだけ力が入った。
「お前、早く戻んないとヤバいんじゃないの?」
「あっ、そうだ!やっべ!」
じゃあな!と言う飯田の声とともにばたばたと走り去る足音が聞こえて、俺はようやく力を抜いた。
ゆらゆらと振動が伝わってきて、高槻が歩き出したことを知る。
「怖かった?」
抗議の意味も込めて胸元を軽く叩くと、高槻が笑う気配がした。
「あ、着いた」
そんな声が聞こえて、俺はバスタオルからそっと顔を出した。確かに俺の部屋の前だ。
鍵を出してドアを開けると、高槻は俺を抱えたまま中に入った。
「…もういい。下ろせ」
「はいはい」
部屋の入り口でそっと下ろされる。
「一人なの?ま、そうじゃないとシロなんてできないか」
部屋をぐるりと見渡す高槻に、俺は改めてこいつに正体がバレたことを思い出した。
こいつは、俺がシロだとバラすだろうか。
それとも、秘密にしておいてくれる?
「…そんな顔すんなよ。誰にも言わないから」
不安が顔に出ていたのか、苦笑した高槻はあやすように俺の頭を撫でた。
血みどろの噂が囁かれる、最強の不良〝金獅子〟。
情報では血も涙もない戦闘狂だったのに。
何だかとても、優しいと言うか。
「…ぁの」
「ん?」
不思議そうにこちらを見た瞳を、まっすぐに見つめる。
甘くて穏やかな、琥珀色の瞳。
「……ありがと」
小さな声で、感謝を伝える。
ふと、高槻の目が変わった。
甘い瞳から、獣のような鋭い光を宿した瞳へ。
え?と思った瞬間、俺は高槻に引き寄せられていた。
「なっ、んんっ!」
後頭部に手が回り、柔らかいものが唇に触れる。
柔らかいものが高槻の唇だと理解したときには、熱い舌が唇を割って入り込んできていた。
高槻の舌が歯茎をなぞり、俺の舌を探し当てて絡めとるように動き回る。
痛いほど舌を吸われて、俺は高槻の胸板をどんどん叩いた。だが、高槻はびくともしない。
「んっ、ぁ、何してっ、」
束の間離された唇は、またすぐに俺の中でそれと重なった。
息ができない。頭がぼーっとして、何をされてるのかわからなくなってくる。
高槻を叩く手が制服にすがり付くようになったあたりで、高槻の唇はようやく離れていった。
最後に、俺の唇をその舌でぺろりと舐めて。
「っぁ、はっ、なん、なの、バカっ!」
力なく高槻を叩くと、高槻は柄にもなく申し訳なさそうな表情をしていた。
それがなんだか意外で、胸元を叩く手が止まる。
「ごめん、何か我慢できなくなっちゃって」
「っ、早く帰れ!」
「はいはい」
思ったより素直に、高槻はドアへ向かった。
「じゃ、また明日」
「!?」
部屋から出る直前、ちゅ、と軽いリップ音を立てて唇を吸われる。
「ふざけんな!早く行け!」
何なんだよこいつは!
からかってんのか!?
楽しそうに去っていく高槻を見ながら、俺はごしごしと袖で唇を拭った。
一目惚れした、とか、好きだ、とか、付き合って、とか。
全部本気なんだろうか。男にキスするくらい。
……明日から、会いたくない。
だって、どんな顔して会えばいいんだよ。
どうしようもなくイライラして、俺は腹立ち紛れにドアを勢いよく閉めた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 25