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しあわせな女の子・・・・終
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朝7時、ホテルを出るときは、昨日とは逆だった。
無言で歩き出す杉田さんの歩幅が大きい。
昨日は大久保公園を超えたところでリラックスして、二人で話しながら歩いたホテル街を、杉田さんの靴のかかとを見つめて歩いた。
なんとなく追いついてしまって並んだタイミングで、ボクの手が杉田さんの手に触れたら、さりげなく手が逃げた。
でも、歌舞伎町に出て、新宿駅に向かうまばらな人に混ざったところで杉田さんの方からボクに並んできた。
そうだよね。ありふれたサラリーマン二人、朝の歌舞伎町なら歩いてても怪しくない。
「ドン・キ寄ろう」
「え?」
24時間営業の量販店に入ると、適当なワイシャツとネクタイを買った。
別に昨日と同じ服なんて気にする同僚いるのかなあ。ボクは気にしちゃうけどね。
トイレで着替えた後、ドーナッツショップに入った。
タブレットで今朝の新聞をチェックしながら、チョコレートのドーナッツに大口でかじりつく杉田さんをぼんやり見ていた。
なんだろう、杉田さんにとって、「この世界のすべてのことは当然のこと」なんだな。
ボクはミルクティーにふた袋目の砂糖を入れていた。
「えっ!そんなに入れんの?甘党?」
毎朝の甘いミルクティは、おかあさんの味だった。
「しあわせな女の子になってね」
週末、ラインの佑くんのトーク画面に「トークメンバーがいません」の文字が出た。
ひとしきり泣いて、ボクはブックマークしていた美容外科クリニックに電話をかけた。
「タマとりたいんですけど」
しあわせな女の子・・・・・終
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