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season #9
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「おい!雅範!お前、なんとかしてこいよ。」
バスケ部の雅範は体育館で練習中だった。
先輩に言われ、指差す方を見てみると、女の子が10人位、
入り口の所でキャーキャー言っている。
「なんとかって言われても……。」
飛んできたボールをキャッチして、女の子達の方を見ると、
一斉にキャーと悲鳴があがった。
「あれ、みんなお前目当てだから。」
「そんなことないっすよ~。」
「いいから行け!行ってなんとかしてこい!」
先輩に言われ、しぶしぶ女の子達の方に向かう。
雅範が近づくと、今まで声を上げていた女の子達が静まり返る。
「あの……ごめんね。練習中だから、もう少し静かにしてもらえるかな。」
雅範が顔の前で手を合わせて、お願いのポーズをとる。
女の子達は、顔を見合わせて下を向く。
「あ……応援してもらえるのはすっごく嬉しいよ。」
雅範の言葉を聞いて、女の子達に少し笑顔が広がる。
「試合とかだったら、大声で応援してもらって全然OKだから。」
雅範の笑顔は、女の子達の中に和やかな空気を広げていく。
ふと、雅範は一人の女の子が持っている物に目が止まる。
「それ、どうしたの?」
声を掛けられた女の子はハッとして、持っている物を後ろに隠す。
「ね?怒らないから、教えてくれる?」
雅範の人懐っこい笑顔に、女の子はおずおずと持っていた物を差し出した。
「カズ!どういうことだよ!」
いつもの木の下で、雅範はひどい剣幕で和哉に食って掛かる。
「何のことですか?」
和哉は雅範の剣幕など気にする様子もなく、弁当を広げ始める。
「これだよ!」
雅範がテーブルの上に数枚の写真を並べた。
雅範がバスケしてる写真。
修と智が並んで笑ってる写真。
淳一が部活で練習してる写真。
和哉と智が廊下を歩いている写真。
「あ、これ、ここ?ランチ?」
修が自分の写真を取って、智に見せる。
智も、うんとうなずく。
「ああ、これ写り悪い……。」
淳一が自分の写真を指差して、片頬をあげる。
一通り見終わると、みんな和哉に視線を移す。
「これ、カズだよね?」
雅範がするどい口調で問いただす。
「そうですよ。」
和哉はお弁当を食べながら、しれっと答える。
「そうですよって、かってにこんなことして!」
「何言ってるんですか!このカメラ、いくらしたと思ってるんです?
採算の合わないこと、私がするわけないでしょう。」
雅範は一瞬、和哉の言葉に納得しかけ、イヤイヤと頭(かぶり)を振ってしゃべる。
「……かってに人の写真撮って、売っていいわけないだろ!」
「はぁ、これだから、バカは困るんですよ。」
「バカって言うなよ!」
雅範が大声をあげる。
「なんでこんなことしたの?」
淳一が自分の写真をペラペラ振りながら、和哉を見る。
「だからね、これはみんなのためでもあるんですよ。」
「みんなのため?」
淳一が首を傾げる。
「そうですよ。我々は注目を浴びているんです。
このテーブルだって、いつも空いてるのは5人が座るのがわかってるから。
周りを見てごらんなさい。みんな遠巻きに我々を見ているでしょう?」
4人はお互いの顔を見回し、仕方なくうなずく。
「彼らの気持ちをくんで、それ以上近づけないようにする。
そうすれば、我々も有意義な高校生活が送れる。」
和哉はとうとうと話し続ける。
「待って、どうして写真を売るとみんなが近づけなくなるの?」
雅範が腕を組んで考えこむ。
和哉ははぁと溜め息を付き、それくらいもわからないのかと厭味な視線を雅範に送る。
「あんまりリアリティのない、アイドルになってしまえばいいんです。
そうすれば、簡単には近寄ってこない。アイドルと言えば生写真。
ね?わかりました?」
「自分のしていることを、正当化するための屁理屈だろ?」
これまで黙って聞いていた修が、弁当から顔を上げる。
「修ちゃんにもわかんない?それだけじゃない、一石二鳥…いや三鳥の
しかけなんだけどな……。」
和哉は自分の写っている写真を指に挟んで、ピッとみんなに見せた。
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