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season #11
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ランチ が終わってみんなが校舎に戻っていくと、
淳一が和哉を呼び止めた。
「カズ、俺はごまかされないよ?」
淳一が和哉を見て、ニヤッと笑う。
「なんのことですか?」
和哉が、白々しく答える。
「他のやつが撮ってるからって、お前が写真売ることの理由にならないだろ?」
和哉はフンッと鼻を鳴らし、
「結果は一緒なんだけど……。」
「どういう意味だよ?」
「智の為ってことかな?」
「ちゃんと説明しろよ!」
淳一が和哉の頭を抱え込んで、ギュッと締めた。
「痛い!痛いってば!」
「ちゃんと話す?」
「話す、話す!」
淳一が力を緩めると、和哉は頭を振って、溜め息をついた。
「さっき他のやつが撮ってるって話したのは……修ちゃんが彼女作って、
智が淋しそうだったから。一緒に帰る、いい口実ができたでしょう?」
「………。」
淳一が和哉をじっと見つめる。
「な、何?怖っ!目力!目力あんだから!」
和哉が淳一の視線を遮るように手で淳一の顔を隠す。
「……お前、本当はいいやつなんだな。」
淳一は笑って、和哉の肩に手を回す。
「う、うるさいよ。」
和哉は照れたように笑う。
「お前なら、しめしめって、智にいくと思ってた。」
「そりゃ、行きますよ?でも、智が元気がないのは……嫌なんで。」
淳一がクスクス笑う。
「じゃ、智が危ないことはないんだよな?」
「それは……わかりませんけど。」
「え?」
「私が話したのは本当のことですから。それが危ないかどうかはわからない。」
和哉はニヤッと笑って続けた。
「ま、私が何かありそうに話したのは間違いありませんけど。」
「和哉!お前はほんとに……。」
淳一は、おもむろに和哉の髪を掴んでクシャクシャにした。
「や、止め……。」
和哉は淳一の腕から逃れ、髪を直しながら、
「で、私が写真売ってるのは……。」
淳一の耳元に口を近づけ、小さな声で話し始めた。
智と修はあの、桜の木の下で待ち合わせた。
智が先に来て、一人でベンチに座って待っている。
修君に彼女ができた……。
どうしてこんなにショックなんだろう。
おいらって独占欲、強かったのかな?
ジュン君だって彼女いるのに、カズだって、マー君だって……。
みんなモテるんだもん。
周りに女の子の一人や二人……。
智は、はぁーと溜め息をついて、桜の木を見上げる。
もう、葉が生い茂り、夕暮れ時でもその瑞々しさがまぶしい。
一緒に帰るの断られた時、胸が千切れそうだった……。
彼女を優先するの、辺り前なのに、どこかでおいら、
修君はって思ってたんだよな……。
そんな自分が恥ずかしいよ……。
智はぼんやり空を眺める。
遠くの空はゆっくりと群青色に包まれて始めている。
その空を、鳥が2羽飛んでいく。
童話のような世界。
智はなんだか悲しくなって、目の前が霞んでいく。
そこへ、修が走ってくる。
「ごめん、遅くなった!一人で大丈夫だった?」
修が智の前で立ち止まる。
智は修を見上げると、余計に涙が込み上げてくる。
「……どうした?……泣いてる?」
修が智の頬に手を添えると、智はその手を握って、顔から離した。
「大丈夫。目にゴミが入って、痛くて……。」
ポケットからハンカチを取り出して、目を押さえる。
「目、見せて。」
修は智の顔を両手で挟んで自分の方に向けさせる。
修が顔を近づけていくと、智の胸がドキリと波打つ。
「大丈夫だから。」
智が修の手を払いのけようとするも、修は手を離さず、
智の目をじっと見つめる。
「ちょっと上向いてみて。」
修に言われるまま、黒目を上に向ける。
「うん……取れたみたいだね。」
修はそう言いながら、両手を離そうとはしない。
「大丈夫なら……修君、離して……。」
智が視線を外すと、修はゆっくり手を離した。
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