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season #41
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男子生徒の顔は……やっぱりよく見えない。
「あいつ……。」
「ジュン君と同じクラスなんでしょう?」
「う~ん、よくわかんないな……。もうちょっと近づけば……。」
淳一が近づこうと歩き始めると、男子生徒が智の肩に顎を乗せ、
智に何か囁いていた。
智もじっと動かない。
その時、何かが淳一と雅範の横をものすごい勢いで通り過ぎていった。
バタバタと足音をさせ、智と男子生徒の間に入ると
智の肩を思いっきり引き離した。
「気安く智に触んな!」
修の目は三角に吊り上がり、全身で威嚇する。
「修君……。大丈夫だよ。」
「何が大丈夫なんだよ?今のわかってる?ほっぺにキスされそうになってたんだよ?」
「……あはははは。そんなこと、あるわけないよ。ねぇ?」
智が笑い飛ばすと、男子生徒は頭を掻いて照れて見せる。
「そんなつもりはなかったんですが……。」
「じゃ、何してたんだよ。」
修の目はまだ三角のまま、威嚇し続ける。
そこへ淳一と雅範がやって来る。
男子生徒は二人に驚いて、顔を隠すように体の向きを変える。
「やっとセンサー、発動したね?」
雅範はケラケラ笑いながら修の肩をバシバシ叩く。
「修ちゃん、こんなとこで何してんの?」
淳一がびっくりして目を丸くする。
「俺?俺は部活の買出し手伝わされて……そこのスーパーで。」
修が角のスーパーを指差す。
スーパーの前には、自転車に乗った女子生徒がこっちに向って軽く会釈している。
ジャージを着て、髪を後ろで一つに結び、大荷物を自転車に乗せている。
「買出し?スーパーで?」
淳一が怪訝な顔をする。
「夏休み入ってすぐに学校で合宿だから、その買出し……。」
「二人で?」
「……そうだけど…。」
淳一は厳しい目で修を睨み続ける。
「違う!俺の話じゃない!こっち!」
修は智の隣の男子生徒の腕を引いて、淳一達の前に突き出す。
「修ちゃん、一緒に帰ってただけだよ?なんでそんなに怒ってるの?
それにみんなも。なんでここにいるの?」
智は不思議そうに首を傾げる。
修はバツが悪そうに下を向く。
淳一はじっと男子生徒を見続け、するどい声で言う。
「お前、同じクラスの……。」
「ごめん。俺、帰るね!」
淳一の言葉を遮ってそう言うと、男子生徒は走って信号を渡って行った。
「待って!」
智の声は男子生徒に届かず、男子生徒は夜の闇に紛れ見えなくなっていく。
それを見つめる4人……。
男子生徒が見えなくなると、智は3人に向き直り、
ちょっと怒ったように頬を膨らませる。
「みんな、どうしてここにいるの?帰り道じゃないだろ?」
「それは智が一人で帰るって嘘つくからですよ。」
3人の後ろから声がする。
みんなが振り返ると、やっと追いついた和哉が、疲れ果てた顔で立っていた。
「和哉、お前、何してたの?」
修がげっそりしている和哉を見て、不思議がる。
「は、走ったんですよ。体力チャージしないと動けないくらい。」
和哉は肩をすくめてみんなを見回すと、智に抱きついた。
「チャージ♪」
「く、くっつくな~!」
修が二人の体を引き離す。
「ほんと、油断も隙も……。」
「とりあえず智も無事だし、修ちゃん、行かなくていいの?」
和哉の言葉に修は慌ててマネージャーの方を見る。
「やべっ!行かないと。」
修は智に向き直り、智の、さっきキスされそうに見えた頬に手を伸ばす。
「何もなくてよかった。」
頬を片手で包み、親指でなでると、目尻を下げて智を見る。
「じゃ、行くね。……あ、和哉!また智に抱きつくなよ!」
和哉を指差し凄むと、修はマネージャーのところへ走り出した。
「修ちゃん、センサー電源オフっちゃダメだよ~!」
雅範が修に向って叫ぶ。
みんなで修の背中を見送ると、
「さて……。」
和哉は智の前に立ち止まり、智をじっと見据える。
「あいつの名前……聞いた?」
智は和哉から視線を外し、下を向く。
「……ごめん………忘れた…。」
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