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season #48
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「じゃぁさ、休み合わせるとしたらお盆あたりだね?」
雅範が手帳を出して、カレンダーとにらめっこする。
「あ、聞いといたよ。早めに言ってくれれば、まだ部屋あるって。」
淳一が弁当のお和哉の豆に遊ばれながら、みんなに言う。
「さすが!社長の息子!」
雅範がおだてると、淳一はムッとしながら、そっと箸で豆を摘む。
摘めた豆をゆっくり口へ運んでいく。
「親戚のうちの宿だから。……じゃ、お盆に一泊でいい?」
「二泊したいけど……仕方ない!」
雅範が勢いよく手帳を閉じると、口に入る直前で、淳一の箸から豆が落ちる。
「雅範~!」
「ひゃっひゃっひゃっひゃ。ごめんごめん。」
淳一の鋭い睨みに雅範が小さく手を合わせると、和哉がクスクス笑う。
「じゃ、私は電車、調べておきましょうかね。」
「伊豆か~。太平洋の海だね。」
修がご飯を食べながら、智を見る。
「うん。青い空、白い雲だよ。」
智も夢見るようにそう言う。
「はは。それじゃ、南国だよ。あくまでも日本だから。あんまり期待しちゃダメだよ。」
淳一が笑ってまた、豆を摘む。
「でも、海があって、ビーチがあって、みんなで行くんだよ!」
智がとても楽しそうなので、みんなも微笑まずにはいられない。
「女子のビキニもあるしね~。」
淳一がニヤニヤしながら修を見る。
「なんだよ。ジュン!」
「別に。修ちゃんはビキニ好きかなぁと思ってね。」
「なっ!」
修が淳一を睨むと、雅範が慌てて間に入る。
「男子なら誰でも好きでしょ?ビキニ。ね?智?」
雅範の笑顔に釣られて智もうなずく。
「うん……。女の子のビキニ、可愛いよね?」
「いやいや、あなたの海パン姿も楽しみにしてますからね?」
和哉が片目をつぶって見せる。
「え……海パン?」
智が首を傾げると、修が両手を振って、立ち上がる。
「ダメだ、ダメ。海は止め。却下。」
「修ちゃん、わかりやすすぎ~!」
雅範が指を指して笑うと、和哉も淳一も大声で笑った。
智だけはキョトンとして、修を見る。
「ねぇ、なんで海、ダメなの?」
「それはね、智の柔肌を……。」
和哉がおもしろがって説明しようとすると、修が智の耳を塞ぐ。
「修君?」
「お前ら、ほんと、覚えてろよ!」
3人はお腹をかかえて笑い転げた。
明日、通信簿をもらうと、明後日からは夏休み。
次に5人で顔を合わせるのは、嬉し楽しい伊豆旅行だ。
夏休みに入った次の日、智は部活で学校に来ていた。
コンクールの締め切りが9月で、それに出品する作品を夏中に描かなければならない。
自由参加だったが、智も何か描こうと思っていた。
でも、何を描こうかテーマが決まっていない。
智はスケッチブックを持って、美術室を出て行った。
外はジリジリと太陽が照りつけ、歩いているだけで肌が痛い。
午後2時を回っている。
一日の中でも暑さのピークに近い。
智は日陰を探して歩いていく。
校庭を見回すと、サッカー部が汗だくになって練習している。
今日から合宿も始まり、気合の入り方が違う。
智は目を凝らして修を探した。
「あれ?修君練習してない?」
校庭で練習している部員の中に修らしき姿は見当たらない。
サッカー部の部室の方を見てみると、水場の方から声が聞こえてくる。
「修君?」
水場はここからでは見えない。
近づいてみると、時々水しぶきがあがる。
「何?」
智がさらに近づいて行くと、確かに修の笑い声がする。
「修君、誰かと一緒?」
智はこっそり水場を覗いてみる。
蛇口にホースを付けて、修と背の高い筋肉質な先輩が水を掛け合っている。
上半身には何も着ていない。
「止めっ!止めてください!」
修は笑いながら、水を手で避ける。
それを先輩が後ろからホールドして、水をかけている。
「止めろと言われて止められるか!」
二人は楽しそうにずぶぬれになっている。
智はドキドキしている自分に気づく。
いつの間にか、ほどよく筋肉のついた修の体。
水にぬれた肌が、陽の光を浴びてキラキラ光ってる。
その肌を、先輩の陽焼けした太く硬そうな腕が、ガシッと押さえつけている。
思わず声が出る。
「修……君…。」
笑っていた修が智に気づく。
「……智?」
二人の動きが止まる。
智の顔が見る見る赤くなっていく。
「智?」
修が智に近づいていくと、智は後ずさりする。
「智…。」
「修君……なんか……イヤァ~~~っ!」
智はわき目もふらずに走って行く。
「ええ~っ?智……?」
修は改めて、智が見たものを確認する。
自分と先輩を交互に見ると、先輩と視線が合う。
「あれは……なんか、誤解したみたいだな?」
「ええ~っ!!智~~~っ!」
修は走って追いかけたが、智の姿はもうなかった。
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