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season #78
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部屋に戻っても、おじさんの幽霊の話は終わらない。
「女の人、きれいだった?」
淳一が聞くと、
「う~ん、わかんない。すぐ消えちゃったから。
でも色っぽかった気がする……。」
雅範が布団にうつぶせになって答える。
「言っときますけど、私は半信半疑ですからね?」
和哉はゲームの電源を入れ、雅範の隣の布団に寝そべる。
「ほんとなんだってば~。」
雅範は肘を付き、両手の上に頬を乗せる。
「でも、信じないと、あの状況の説明が付かないから……。
信じることにしますよ。」
「俺も、本当に記憶ないんだよ。」
淳一は修の隣に座り、ペットボトルからミネラルウォーターを飲む。
そんな淳一を横目で見て、隣の布団で寝ている智をチラッと見る。
智は涼しげな顔で、スヤスヤと寝息を立てている。
「全員に見える幽霊ね……そんなのいる?」
修が首を捻ると、雅範が声をあげる。
「でも、でも、誰もおじさんには障ってないでしょ?」
「そう…ですね……。」
和哉も顔を上げて、首を捻る。
「智は……触ってたよ?」
修が言うと、雅範がグーにした手をポンと叩く。
「でしょ?智以外触ってない!智には女の人が憑いてたから触れたんだよ。
やっぱりおじさんは幽霊なんだよ!」
「智だけ触れる幽霊ね……。」
修はやっぱりどこか腑に落ちなかった。
「お世話になりました!」
宿のおじさんとおばさんに挨拶すると、おじさんはニコニコしながら駅まで送ってくれた。
車に乗り込む5人を見て、おばさんも手を振ってくれる。
「また、来年もおいでね。」
「はい!」
5人も笑顔で応える。
ワンボックスカーの中で、おじさんが後部座席の淳一に向かって話しかける。
「朝、お風呂入ったのか?」
「うん。朝風呂、気持ちよかったよ~。なんで?」
淳一がニコニコしながら答える。
「あんなに早く来ればわかるよ。朝まで起きてたの?」
「ううん。寝たよ。」
おじさんは言い辛そうに口を結んで、バックミラー越しにチラッと淳一を見る。
「何?」
「露天風呂入った?」
「うん。朝になっていく景色がきれいだった。」
「朝日……見たか?」
「うん。見たよ。上っていくの、きれいだった~。
朝日なんて、初日の出くらいしか見ないから。」
「そう……誰か……いた?」
「……いたよ。……なんで?」
淳一の怪訝そうな顔におじさんも、困ったような顔でバックミラーを見る。
「年配のおじさん?」
「そう。俺らくらいの子供がいるって言ってた。」
「そうか……出たのか……。」
「で、出たってやっぱり……。」
淳一が身を乗り出して、おじさんの顔を見る。
おじさんが、声のトーンを下げて話し出す。
「うん……。朝日を見る幽霊が出るってうわさでね。
でも変なうわさが立つと困るから黙ってたんだけど……。
見たんだ……みんな。」
おじさんの声は小さかったけど、車の中の全員がおじさんの言葉に聞き耳を立てていた。
「幽霊は何か言ってた?」
「言ってたかどうか……。」
淳一が雅範を見ると、雅範が一番後ろの席で立ち上がる。
「智が島から女の人の幽霊連れてきたって!
おじさんの奥さんみたいで、でも、二人で成仏してくれたよ!」
「そうか……成仏してくれたのか……これで、もう出なくなればいいんだけど……。」
みんな、お互いの顔を見合わせる。
「きっと、もう出ないよ。」
淳一がおじさんに向かって笑いかける。
「そうだな……でも、島で何時間も遊んだりしたから幽霊なんかに会ったんだよ。
これに懲りたら、ちゃんと、分別を持って行動するように。
わかったか?」
「はい!」
全員、声を揃えて答えた。
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