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閨-弐
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スルスルと、流れるように脱がされる浴衣と、それなのにずっと離れない視線。
恥ずかしくなって目を伏せれば、重なる口唇。
せめて灯りを消して欲しいと懇願しても、久しぶりのお前をよく見せろ。だなんて仰るから。
僕にはもう、逃げ場がないのです。
「--綺麗だな。葵」
「恥ずかしい、ので…あまり見ないでくださいませ…」
嗚呼、本当に、やせっぽちで、醜い身体なのです。
それなのに、貴方は、鷹仁様は、宝物に触れるかのように大切そうに触れてくるから。
「白くて儚くて折れてしまいそうで…嗚呼、駄目だな。
--未だに、この瞬間は夢なんじゃないかと…。
お前は、ここにいるんだな。…ここにいるんだよな、葵。
もう本当に、一緒に居られるんだよな」
そう言って、初めて見るくらい嬉しそうに笑うから。
僕はもう、貴方に身を委ねるほか、ないのです。
「二度と離さない。もう…あの地獄のような日々は御免だ…。嗚呼、やっと…、漸く、この手に、この腕に、お前を抱ける時が来た…」
「--ええ。離さないでください…。もう、二度と。
あの日々に戻ったらきっと僕は…」
貴方恋しさに、狂ってしまうでしょう。
その言葉を紡ぐと同時に、胎内に埋め込まれた鷹仁様に搔き抱かれた僕は間違いなく、この瞬間、この世の誰よりも幸せだと、そう確信したのです。
愛する者と時を同じくすることが、こんなにも泣きたくなることなのだということを、僕は鷹仁様、貴方に、教えていただきました。
叶うことならこの幸が、
この命の灯火尽き果てる、その最期の瞬間まで
永遠に続かんことを--。
閨-完-
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