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ホテルなんて泊まったことがないからわからないが、きっとこんな感じなのだろう。とっても広いエントランスにはよくわからないが高級そうなソファやテーブルが置いてあった。家に帰ってきたのにこんな場所が必要なのか庶民にはわからないが、どっちを向いても煌びやかで自分がすごく浮いている気がしてならない。
キョロキョロしている僕とは対称に、真っ直ぐ奥のエレベーターホールへ進んで行く一ノ瀬くん。少しでも離れてしまうと迷子になってしまいそうだったため、それ以上のよそ見はやめた。
もうすでに呼んでいたのか、僕が追いついたのと同時にエレベーターが静かに到着する音がした。その音すら上品に聞こえるのだから凄い。
一ノ瀬くんがためらいもなく最上階のボタンを押すと、今まで体験したことのない体感でエレベーターが登っていった。少し怯んでしまったが、隣からの視線が気になってしまい、背筋を伸ばし直した。
最後はゆっくり止まって、静かに扉が開いた。
その先も僕が知っているマンションとは程遠い景色だった。そんな中を一ノ瀬くんの後に続いて僕も進む。まるで異世界に来てしまったかのようだった。
そうして1番奥にある部屋の前までくると、彼は鍵を出す訳でもなくドアノブを握る。するとどこかにセンサーがあったのか、ガシャンという錠の外れた音がした。最新の家には鍵もないのか……
スマートに中へ入っていく一ノ瀬くん。
僕は今更ながら中に入るのを躊躇ってしまった。
「あがれ。」
命令口調ではあったが怒ってはいなさそう。その勢いで思わず聞いてしまった。
「……なんで僕なんかつれてきたの。」
ぼそっと呟いて、玄関先から中々動かない僕を見ているのが俯いていてもわかる。痛いくらいに感じる視線に、このまま踵を返して帰ってしまいたい気持ちになった。
「………そういう顔すんなよ。」
一ノ瀬くんから返ってきたのは全然答えにはなっていなかったけれど、僕を動かすには何故か充分であった。
上がってみて僕はびっくりした。
「一ノ瀬くんって、もっと生活感ない人だと思ってた。」
別に凄い汚い訳ではないけれど、すごく広いモデルルームみたいなお家なのに、さすが男子があちらこちらに伺えた。いつものクールな感じからは想像できない。
プライベートエリアに入ったからか、いつもなら絶対に言わないような事を言ってしまったのに気づいた。
「あ、……すみません。」
「すぐ謝るのやめろ。うぜえ。」
そう言いながら、ソファにかかっていたスウェットをとって片付け始めた彼に、自然と「うん、」と返していた。
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