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ブルームーン 1
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藤井は走りたいのを我慢して、小走りで進んだ。
人ごみをよけ、追いかけてくる相手があきらめてくれるのを願いながら。
走ったら、自分の体力が続かないのはわかっている。
自分が走れば相手も走るだろう。
相手の方が体力があれば、追いつかれてしまう危険性が高い。
大通りは人が多く、思うように進めなかったので、横道に入った。
相手が自分を見えない間だけと思い、道を曲がったとたんに走り出したところで、人にぶつかり、転んだ。
「すみません!」
そう謝りながらも、視線は追手の姿を探していた。
そして、その追手がやはり横道に入ってくるのを確認すると、「すみません」とぶつかった相手にもう一度謝り、立ち上がった。
「ホテルまで行って、逃げてんじゃねーよ!」
追手の男が藤井に追いつき、手を伸ばした。
「すみません!SMと思わなかったので」
なんとか逃れた藤井の腕を、追手がさらにつかもうとした時、その腕を横からつかむ男がいた。
藤井がぶつかった相手だった。
「なにすんだよ!」
追手の男が、腕をつかんだ男に向かって怒鳴った。
藤井は今のうちに逃げるべきではないかと思いながらも、二人のことが気になって、少し距離を置いてその場にとどまった。
「やめとけ」
腕をつかんだ男が言った。
追手の男よりもだいぶ若そうだった。
「なんだと?」
「こいつは、あそこにいるやつらとグルだ。
奴らのところに逃げ込んで、あんたを引き渡すつもりだ」
追手の男は、相手が顎で示す方向を見た。
3人の男たちが、こちらの様子をうかがっていたが、追手の男の視線に気づいたのか近づいてきた。
男はつかまれていた腕を振り払い、元の道へ小走りで去っていった。
藤井はその様子を呆然として見ていた。
もちろん、彼は言われていた男たちとグルでも何でもない。
近づいてきた3人の男たちが、藤井を助けてくれた形になった男を囲んだ。
「浅黄、さっきの男はなんだ?」
1番背の高い男が聞いた。
「彼を追いかけまわしてたみたいだったから追い払った」
「お前がトラブルに巻き込まれてるのかと思ったよ」
「ちがうよ。
で、なんで、お前らは店の前で立ってたんだ?」
「休みなんだよ。だから、お前が来るのを待ってたんだ。
そこの店でいいか」
目の前の店に4人で入ろうとし、一人が藤井に向かって声をかけた。
「せっかくだから、君もくれば。
さっきの男が、まだ、この辺をうろうろしてるかもしれないぜ」
藤井は助けてもらったお礼をきちんと言っていなかったので、彼らに続いて店に入った。
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