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夏原'sバースデー
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【本編271話、執筆後】
10月1日は夏原センセのお誕生日でした。
ということで、夏原の誕生日のお話をちょこっと♡
どこにもプロフィールは出していないので、作者だけが知る事実ですみません^^;
真鍋、火宮、翼、夏原、その他部下さんたち総出演の、ブレない人々のブレない1幕です。
よろしければご覧ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
その日、蒼羽会の事務所には、爆弾低気圧と吹き荒れるブリザードが同時発生していた。
「ひぃぃぃ、今日の真鍋幹部、怖ぇぇよ…」
「マジで、マジで。俺なんかさっき備品の発注ミスを指摘されただけで、チビりそうだったョォ」
ひぃ、と手を取り合う構成員たちが、真鍋の強烈な不機嫌に当てられ、半泣きになっている。
「ど、どうしたんだ?あれ。なんか真鍋幹部が氷河期纏って廊下をカツカツ歩いてたんだけど…」
「俺も見た。凍りつくようなオーラを放ちまくって、上に向かって行ったぜ」
直接的に被害を被らなかった構成員たちも、廊下をすれ違っただけの真鍋に縮み上がり、ざわざわと噂をしていた。
「まぁ、見事に不機嫌だな」
ははっ、と苦笑しながら現れたのは、真鍋の直属の部下の池田で。
「池田幹部っ!もう、なんなんすか、あれ」
「八つ当たりしてくるとかじゃないんですけど、あんなオーラ放たれまくってたら、怖くて声もかけられないんですけど」
仕事上の質問があるのに、と眉を下げる部下に、池田の苦笑はますます深くなった。
「今日は、触らぬ神に祟りなしだ。質問があれば俺がフォローする。寄越せ」
「池田幹部ぅー」
仏様ー、と縋る部下たちに、池田の苦笑は、ますます、ますます深くなった。
「まぁ原因は、アレだからな…」
はぁっ、と落ちる溜息が、池田の苦労を物語っていた。
その噂の爆弾低気圧、真鍋本人はというと。
幹部室で鋭い目をさらに鋭く吊り上げて、1人の男を睨みつけていた。
「だから、いい加減になさい」
「えー、だって時間まで暇なんだもん」
「あなたがお暇でも、私にはやらなくてはならないことがごまんとあるのですよ」
「だからそれ手伝うから、今夜くらいいいでしょ?」
バリバリと手元の書類を恐ろしい速さで捌きながら、真鍋の視線は相変わらず周りをうろちょろする男を睨んでいた。
「だからそれはもうお断りしましたよね」
「うん。で、諦めきれないから、こうしてまとわりついてるの」
そう、真鍋の強烈な不機嫌の原因は、今日の昼過ぎ、ふらりと蒼羽会事務所にやってきて、ひたすら真鍋に絡んでいる、夏原海里、その人のせいだった。
「仕事の邪魔です」
「酷いなー。今日は特別な日だっていうのにさ」
「特別って…その年になって、誕生日も何もないでしょうに。そんなに祝って欲しければ、祝いたいという女たちと派手にパーティでもなされたらよいのです」
いくらでもいるでしょう?と視線を流す真鍋に、夏原の顔がムッとなる。
「俺は能貴にお祝いして欲しいの!」
「はぁっ。でしたらほら、言い値をどうぞ」
バサッと小切手の束を取り出した真鍋が、さぁ、と金額の欄にペン先を置いて夏原を見る。
「はぁっ?何それ、どういう意味」
「お祝いの品ですよ。プレゼントを買いに行く余裕はありませんから、ご自分でどうぞお好きなものをお買い求め下さい」
ほら早く、と急かす真鍋に、夏原の顔がぷぅと膨れた。
「金はいらない」
「ですから私にこれ以上の何を求めるのですか」
昼過ぎからずっとまとわりつかれて、さすがの真鍋の我慢も限界だ。
「だから今夜、食事に付き合ってくれればいいんだって」
「ですからそれはお断りしましたよね?」
延々と繰り返されるその会話にも辟易だ。
「もう本当、冷たい。じゃぁいいよ。リボンを1つちょうだい」
「は?リボン、ですか…?」
今度はまた妙なものを、と呆れた視線を向ける真鍋に、夏原はふわりと綺麗に微笑んだ。
「本当は俺が欲しいものは1つだけなんだけどね」
「ッ…」
無邪気な笑顔と高を括っていたら、瞬時にゾクッとするような色香を纏った笑顔に変わる。
「プレゼントはリボン1つ」
「………」
「それを結んだ能貴をちょうだい」
に、ぃっ、と笑う夏原に、真鍋の顔がげっそりと疲れ果てた。
「はぁっ、何を馬鹿なことを」
「本気だよ」
「ッ…」
ガシッと掴まれた右腕に、真鍋がギクリと動きを止める。
「本気だよ、能貴」
ジッ、と見つめてくる鋭い夏原の目を真っ直ぐに見返して、真鍋がシーンと黙り込んだ。
「クスクス、なーんてね」
パッ、と離れた夏原の手に、真鍋のいつの間にか強張っていた身体から力が抜けた。
「はぁっ、まったくあなたは…」
くだらない冗談ばかりを、と呟く真鍋の声は、あまりにらしくなく、小さく消えていった。
「あーぁ、夕食、駄目かぁ。ふられんぼだ」
ケラケラと笑う夏原の声が、本音を押し殺したおふざけだということは、聡い真鍋には分かっていた。
「誕生日くらい、能貴も絆されてくれるかな?とか思っていたけど、やっぱ甘かったか」
「………」
「しょうがないから、今からでも女の子たちを集めるかな」
うーん、と伸びをして悪戯に笑う夏原に、真鍋の小声が落ちた。
「……すよ」
「え?能貴、なんて?」
「だから、いいですよ、と申し上げました」
「え?」
シラッとしたまま、書類をトントンと揃えている真鍋の冷たい目が夏原に向いた。
「お食事。お付き合いしますよ、と言っています」
1度で理解なさい、と冷ややかな目を向ける真鍋に、夏原の顔がじわじわと、そして弾けんばかりにパァッと輝いた。
「本当にっ?!本当に?能貴!やった!わーい!」
子供みたいにはしゃぐ夏原に、真鍋の苦笑が向く。
その目は蒼羽会構成員の誰も見たことがないような、穏やかな光を宿していた。
「あっ、じゃぁ何がいい?フレンチ?イタリアン?懐石料理でもいいよ?それとも肉?寿司とか?」
「あなたの誕生日でしょう?あなたの好きなものをお選びください」
「本当?じゃぁ面白い創作料理の店があるんだけど。そこにしよ?」
予約、予約、とはしゃいでいる夏原を見つめる真鍋の目は呆れを含んでいるものの、決して冷たくはない。
「ねぇ、ホテルもとる?」
「は?」
「だって飲むだろ?帰れないだろ?泊まるよな」
どこにしようか、と、ホテルのホームページを開いたスマホの画面を向けてきた夏原の顔面に、真鍋の手のひらがズイッと突き出された。
「うぷっ…」
「調子に乗らないで下さい」
「うわー、相変わらずクール。俺の高い鼻が潰れたらどうしてくれる」
「ちょうどいいじゃないですか。いっそそのヘラヘラしただらしのない顔ごと、綺麗さっぱり手術してもらいなさい」
ヒヤリ、と物理的な冷気すら感じる真鍋の言葉にも、夏原はやはりめげない。
「ピュゥッ、痺れるね、その冷酷さ。跪かせて泣かせて滅茶苦茶に乱れさせてみたくなる」
「本当に、相変わらずの変態ですね」
「言うね」
「あまり調子に乗るのでしたら、食事の件もなかったことに」
「待って!男が1度口にしたことを翻すの?」
「なんとでも。私はやります」
「う…。分かった、調子乗らないから。バースデーディナー、付き合って?」
お願い、と媚びて見せる夏原は、これでは一体どちらが今日の主役なのか。
「はぁっ。もう分かりましたから、とりあえず仕事の邪魔をもうやめていただけませんか?」
「うん、わかった。これで残業でディナーがキャンセルになんてなったら泣けるからね」
「あぁその手が…」
にこっ、と笑う真鍋の目が微妙に本気だ。
「ちょっ、ちょっ、能貴っ?!」
そりゃないよー、と慌てている夏原に、真鍋のこれでもかというほど綺麗な笑みが向く。
「お嫌でしたら、さっさと出て行きなさい」
そろそろ会長とのアポの時間ですよ、とドアを示す真鍋に、夏原はハイハイ、と真鍋の側を離れた。
「池田、夏原先生を会長室へ」
すでに携帯で話している真鍋を、夏原が苦笑して見つめる。
「自分がいるのに、あくまで送ってくれずに追い出すつもりね…」
ブレないそこも好き、と夏原が呟く。
「能貴、やっぱり俺と付き合おう」
「お断りします」
見事な即答と鮮やかな笑顔。
「通算218回目」
あっぱれ、と笑いながら、夏原は迎えにやってきた池田と共に幹部室を出て行った。
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