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はだかの王子様28
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「…ライル、さま」
執事が目を開けるとそこは暗く冷たい牢の中だった。
寒いと感じるのは身体中の血液が刺された腹部から流れ出ているからで、痛みを感じないのは感覚がもう麻痺しているからだと、執事は冷静な頭で考えた。
自分の陥っている状況は嫌という程わかる。
怯えながら息が弱まって行く人々を何人も見て来たからだ。
死とはこんなにも冷たく寂しいものなのかと、執事は思った。
大切にしたい者がいるならば尚更辛かっただろうと。
どんなに罪深いことをして来たのか今更になって気づく。
本当ならばここで今までの罪を悔い、迫り来る死を受け入れるべきなのだが、執事には守るべき者がいた。
まだ死ねない。
冷たい体に力を入れて立ち上がる。
「…エドワードじゃねぇか、おいその体じゃ無理だぜ」
「っ…だれだ」
薄暗い向かいの牢に人影が見える。
「おいおい、昔、散々鍛え合ったじゃねぇか。しっかしまぁお前随分…人間ってのは、変われるもんなんだな。」
「…」
執事は近づいてくる人影に目を凝らした。
「まぁ、俺も身なりは変わっちまったか。」
牢屋の松明に照らされて現れた人物に、執事は目を見開いた。
「っ!ユーフォリア!どうしてこんなところに!フラーさんからは死んだと」
「…おお、アリア様がお亡くなりになられて、俺は彼女の死に納得が行かず単独で色々と調べるため死んだことにしてたんだよ。バレるとマズイからこのことはフラーさんしか知らなかった。悪かったなぁ、騙してて」
ユーフォリアと呼ばれた男は、無精髭を生やし身なりは良いとは言えないが、体つきはよく大柄で豪快そうな人物だ。
「アリアの死に、っ…」
「おいおい、昔は俺たちが束で掛かっても倒せなかったお前が、今じゃ死にかけてるとはこんな楽しいことはないぜ!」
腹部を抑える執事に、ユーフォリアは本当に楽しそうに笑った。
「で?なんでこんなとこにいるんだ?」
「お前こそ。っ…とにかく今は、ライル様を」
「ライル様?って、あのライル様か⁈」
「アリアの死について調べていたのなら知っているんじゃないか?ファイム王子がライル様を恨んでいること。昨晩襲撃されたんだ。だから、」
「お前!執事たるもの主を残して敵にやられるなんて!」
ユーフォリアはそう叫ぶと、自分が入っていた牢屋と執事が入れられていた牢屋の鍵をいとも簡単に開けてしまった。
「この野郎、ライル様を残して死のうなんて思っちゃいないだろうなぁ!そんなことこの俺が許さないぞ!今から傷口を縫うが、痛いなんて言いやがったらっ」
「っ、相変わらずだな」
ユーフォリアは持っていたカバンから様々な道具を出すと、執事の傷口を治療し始めた。
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