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「…ごめんね、そんな顔しないで。」
「親友の…辛い姿くらい、悲しませろ。」
「あはは、君は優しいねぇ。でも平気だよ。あの頃の痛みなんてもう忘れちゃったしね。」
要は俺の手の上へ手を重ねると楽しそうに笑った。
笑う度に表情はたしかに変わるのに、爛れたところだけはピクリとも動かなかった。
「…目は、見えてるのか?」
「見えてないよ。」
「どうしてこんな酷いこと…」
「僕は悪者だからね。でも、ほんの少しだったんだよ。小学生だったから彼らもこんな事になるとは思ってなかったみたい。少し痛がるくらいだと思ってたんだよ。
すぐに大人が来て助けてくれた。」
「もう、元には戻らない…のか?」
「沢山お金がいるんだ。僕らが一生働いても足りないくらい。それなら顔なんていらないよ。僕らユキ君が笑って生きててくれるなら充分。」
要はそう言って立ち上がると空を大きく仰ぎニッコリと笑った。
髪が大きく揺れて、空へ飛んでいってしまいそうな。
「ねぇ、ユキ君。ユキ君は大人になったら何になる?僕らはもうすぐ自由になれるんだよ。」
「…俺は、…記憶を探したい。探す仕事に就きたい。」
「それなら探偵だね!」
「探偵、…は職業か…?」
「もちろん。それなら僕は君の手助けをするよ…そうだね、情報屋なんてどう?格好いいしきっと力になれる。」
「探偵と情報屋…俺達らしいな。」
俺も要を見上げて笑った。
先の見えない不安しかない。
俺達は世界に嫌われてきた。
沢山のものを知らずに生きてきた。
でも、これからは
もしかしたら違う未来があるかもしれない。
「ユキ君、二人だけで生きていこう。僕らの未来を作ろうよ。」
「あぁ。」
「…もう誰も信じないでいよう。」
明るく笑った要はきっと
俺の知らない過去を背負っている。
*
「…要さん?」
「………は、…っ…ええと、どこまで話したかな…?」
「二人が高校生になった所までです。」
「あぁ、そうだったね。僕らは高校生になって…進路に迷ってたのさ。
それで…探偵さんが、記憶を探すために探偵になりたいって言ったから探偵になった。僕はついでにノリで情報屋にね。」
ポチ君へそこまで言ってうーん、と背伸びをした。
あの探偵さんの事だけを大まかにお話したけど、これで伝わった…かな?
僕の事を話さずに伝えるのはなかなかに難しい。
「あの、っ…要さんはどんな子供だったんですか?」
「僕?僕はこーんな感じの普通の子さ。」
「…そうなんだ。」
時に嘘も大切って、誰かが言ってた気がするからね。
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