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寿は歩み出す。
部屋に入ると古びたベッドが一つあるだけ…。
あとのものはすべて処分されたみたいだ。
十年振りなのに埃臭くないし綺麗に掃除されている。
(タキか…)
タキが定期的に掃除をしてくれていたのだろう。
そしてきっとこれもタキの仕業…。
ベッドの上には金色が剥げかけている折り鶴。
この折り鶴のことはよく覚えている。
だって初めてあの人と折った折り鶴だから。
その折り鶴を握ったまま寿はベッドにダイブした。
あの人の温もりはとっくに消えているのはわかっているのに、それでも無意識に探してしまう…。
『今は思い切り泣きなさい。思い切り泣いたら今度は顔を上げなさい。どんなに孤独で辛くても強く生きなさい』
寿はギュッと瞳を閉じる。
(生きているよ…)
辛くても生きてきた。
そして今も…。
その言葉の魔力で…。
寿はゆっくり瞳を開き、掌にある金の折り鶴をじっと見つめる。
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