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ベッドに置かれた王冠にコウは視線を移す。
「その王冠は、皇子が一ヶ月かけて作り上げたものです」
「……一ヶ月!?」
寿は思わず声を上げてしまう。
「皇子は手先が器用な方ではないので一ヶ月かかってしまいましたが、作っている時は寿様をお想いになってのことか、とても楽しそうでした」
「………」
一ヶ月も掛けて作ってもらって嬉しい気持ちなんてまったくなくて、申し訳ない気持ちしかない…。
毎日公務で忙しいはずなのに、一ヶ月も自分のために時間を取らせてしまった……。
「その砂糖菓子も時間を掛けて皇子自身がお選びになりました。ですが、寿様の嗜好がわからないために、もし甘いものが苦手だったらどうしょう…、と何度も仰って、私の耳にタコが出来てしまいました」
コウの最後の言葉は冗談で笑っていいのかわからずに、寿は曖昧な表情をする。
「寿様がこの城に来ることが決まり、皇子は城に着いてからずっとソワソワしてじっとしておられずに外で待っていたのです。私が荷台と一緒に着いた時の皇子の落胆した姿は、寿様にも見てもらいたかったものです」
寿は言葉が見つからず、すっと曖昧な表情のままだ。
「しかも皇子は女官の手伝いを一切頼まずに、皇子と私が寿様の荷物運びをしたのです。荷物運びの間も、本当に寿様は来るだろうか…、とご心配の様子で何度も私に聞いてきました」
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