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「…っん‥」
寿が目を冷ますと布団の端にいたはずの皇子の姿はなかった。
寿は気だるそうに身体を起こす。
(帰ったのか…)
なぜか一抹の寂しさが寿を襲う。
寿は小さくため息をついて、おもむろに引き出しに手を伸ばす。
寿が手に取ったのは、皇子がくれた小物入れだった。
その小物入れの蓋を開ける。
そこには母との思い出が詰まった金の折り鶴。
寿はそれをじっと見つめる。
(俺の傍で本当の笑顔を取り戻してほしいから…、か)
昨日言われた皇子の言葉を頭の中で反芻する。
「俺は笑えていないのか…?」
寿は自問自答する。
自分では笑えていると思っていた。
だけどそれは皇子いわく、本当の笑顔じゃないらしい…。
(じゃあ本当の笑顔ってなんだよ…?)
寿は小物入れに入っていた折り鶴を取り出す。
『俺は寿を愛してくれた人との思い出の場所から切り離して、寿を傷付けた…。…だから寿が俺を好きになってくれるとは思っていない…』
この言葉を聞いた時、胸がひどく痛めつけられた。
『それでも俺は寿に愛を紡いでいく。だが寿には見返りは求めない。それが俺の犯した罰だからな』
それはあまりにも悲しいことではないだろうか?
(皇子に対して、憎しみとかそんなことを考えたこともないのに…)
だから皇子も罰とか考えないでいいのに…。
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