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「…恐れながら、私はこの城に来ることに多少の不安があったのも事実です」
母との思い出が詰まった城と寿を引き離す。
それは寿にとって本当にいいことなのだろうか…。
また表情のない寿に戻ったら…?
そう考えたら背筋に戦慄が走った。
でもこのままではいけない…。
この城にいれば一生タキとの二人だけの生活…。
恋愛も友情も知らないまま、寿は人生を遂げていく…。
だったら、一か八かこの皇子に賭けてみようと思った。
「でも今はこの城に来て良かったと心から思っています。…触れあうのは城の人間だけですが、寿様にとっては今までは私とじぃやだけだったので、これだけの人達と触れあうのは楽しいでしょう…。私には寿様の表情を見ればわかります。…寿様にしてみれば、ここが学校みたいなものでしょうか」
タキが少しだけ表情を崩す。
「何気ない話題で盛り上がり、友達と遊んで、恋愛で悩む。…前まではそんな当たり前のことが寿様には出来ませんでした。…ここでの生活は本当に奇跡みたいなものだ…、と私は勝手に思っています」
皇子が、寿についてここの城で働く人間になんて言ったのかは、知らない。
話し合いで説得…?
それとも脅しをかけた…?
皇子がどんな手段を使ってもいい。
寿が楽しく暮らせたらそれでいい。
今まで辛苦してきたのだから。
「皇子のおかげだと思っています。ありがとうございます」
タキが頭を下げる。
いくら神童と呼ばれても、ここまで出来なかった。
そして頭を上げて、寿の部屋を見る。
「…皇子、泣きたい時に泣けない…、ってどんな気持ちでしょうね‥?」
皇子も寿の部屋を見つめた。
それも力強い眼差しで…。
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