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【76】
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「…………はぁ……」
「一ノ瀬くん、どうしたの?ため息なんてついて」
ちりとりを持ってくれていた同じ掃除担当の女子が不思議そうに俺の顔を覗き込んだ。
「え?ああ、いや…………何でもない、悪いな。そのゴミ、あとは俺がやっておくから先教室行ってて」
そう言って俺は笑顔を作り、大丈夫?と心配してくれている女子からちりとりを受け取った。
ゴミをまとめ、周りに誰もいなくなったのを確認していつも多田先生が話しかけてきた休憩室の窓を軽くノックするように叩いた。
昨日──────多田先生と目が合った後、先生のほうが先に目を逸らし呼び止められたりすることはなかった。俺もすぐにその場から立ち去ってそれ以上勝手に話を聞いたり覗き見をしたりはしなかったが、少なからず勝手に聞こうとしたのは事実だし一言謝るべき……だとは思う。
が、休憩室側からは何の反応もなかった。
(多田先生がいる前提で窓叩いたけど、これ誰もいなかったらかなり恥ずかしいやつだよな……。それに他の先生がいる可能性だってあるし。仮に多田先生がいたとしても俺と顔合わせたくないって思ってるんじゃ……)
どうしようと自分の行動を後悔していると、ガタッと音がして窓とカーテンが開き多田先生が顔をのぞかせた。
居て、かつ出てきてくれたことにとりあえずほっとした。
「………………何かな?」
「あの、昨日資料室で……その、先生達の話勝手に聞こうとしたこと謝りたくて……変なマネしてすみませんでした」
そう言うとそれまで無表情だった多田先生が不思議そうに首を傾げた。
「何で君が謝るの?」
「え、だって勝手に話を………」
「君が謝る必要は何もないよ。あんな話をあんな場所でしてた僕らが悪いんだし………昨日の話、どこからどこまで聞いてた?」
「ちょうど資料室の前を通った時に『一ノ瀬』って聞こえてきたから気になって覗いただけで……話の内容は全然…………」
「なんだ、じゃあ余計に謝る必要なんてないよ。誰だって自分の名前が聞こえてきたら気になって覗き見ぐらいするし」
「…………あの、昨日先生が話してたのって……篠原先生ですか?」
俺の質問に多田先生は「そうだよ」とあっさりと答えてくれた。
「今さらもう隠せないし一ノ瀬くんももう察してるだろうから言うけど、僕ら付き合ってるし何なら同棲もしてるから」
多田先生はそこまで言うと「聞きたいことはたくさんあるだろうけど───何から話せばいいかな」といつもの笑顔を浮かべた。
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