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最悪な再会
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夜10時の繁華街
もう夜だと言うのに昼間のようにガヤガヤと騒がしい繁華街をすり減った靴で歩きながら、大声で喋っている酔っぱらいや、仕事が終わりのやたら上機嫌なサラリーマンを横目で見て思わず溜息が漏れる。
「……はぁぁ。疲れた」
先程、接待という名目の飲み会が終わりやっと帰路に着く事が出来た俺【相澤 修一郎】は接待中、ずっと我慢していた不満や疲れを何度も溜息と共に吐き出す。
それでも、まだ胸に燻るだるさを書き消したくて、鞄から愛用している音楽プレイヤーを取り出し高校時代から好きな曲を流しながら自宅へと急ぐ。
「ーーーー!!! このーーーやろ!!」
足早に歩いていると、前方の方からイヤホン越しでも聞こえる程の怒鳴り声が耳に飛び込んできた。
「……なんだ?」
俺は、イヤホンを片方外して前方を見ると、人相の悪い男が、怒鳴り声を響かせながら明るめ茶髪の男に掴み掛かっていた。
「ふざけんなよっ!! このくそビッチ!! 俺を弄ぶのも大概にしろよ!! 誰にでも股開いてたのか!! 何とか言えよ!!」
喧嘩にしては、随分と酷い事を言われてるにも関わらず掴み掛かられてる人物は、ただ相手の手首を握っているだけで叫ぶなどの抵抗をせず。ずっと俯いているだけだった。
通行人達は、関わりたくないのか見ない振りをして真横を通り過ぎていく。
そんな光景を見て「あぁ、薄情だな」と思いながら通行人に視線を向ける。
綺麗事を思ったが俺も通行人達と変わらない。視線を外し男達の横を通り過ぎようとした瞬間“ドゴッ”っと鈍い音が聞こえて立ち止まる。
横を見ると、さっきまで掴み掛かられていた人物が地面に座り込んでいた。
座り込んでいる人物は、顔を右手で押さえながら俯いていた。茶髪の男は、鼻血でも出ているのか地面をボタボタと垂れてくる血で汚している。
「何も言わないで済ますのかよ!! ふざけんなよ!!」
人相が悪い男は無抵抗の茶髪の男を、ドカドカと蹴りながら悔しそうに顔を歪めている。此処までするなんて一体何があったんだ。
その光景を間近で見て、段々と茶髪の男が気の毒に思えてきてしまい。男同士の修羅場なんて関わるだけ面倒に決まっているのに放っておけず、思わず人相の悪い男の手を掴んだ。
腕を掴んだ瞬間、男はその視線だけで人一殺せそうなくらいの眼孔で俺を睨んできた。
「あ゛?? なんだよ」
「あー……いや……痴話喧嘩か何だか知らないし興味もないけどやり過ぎだろ」
「お前に関係ねぇだろ!! 入ってくんなよ!!」
「関係はないし興味もない。だが、これ以上蹴られてるのも見たくない。これ以上、その男に暴行するなら警察呼ぶぞ」
正直、腕を掴んだが、何を言っていいか分からないし、適当に綺麗事を並べた所で外野の俺には説得力なんて無いけれど、関わってしまった以上蹴られてる人物には死なずに帰って欲しい。
「はぁ? 関係ないお前に警察呼ばれる筋合いはない」
「関係ない。が、痴話喧嘩でもこれは立派な暴行だと思うけど? ……あぁもしもし警察ですか?」
「……くそ! 覚えてろよっ!!」
話していても埒があかないと思い、俺は警察を呼ぶ振りをして鞄から取り出した携帯を耳に当てると、茶髪の男の顔に思い切り殴ると走ってその場を去っていった。
「……っ!」
「おい! 待てこら!」
俺が追いかけようとすると茶髪の男が強く俺の腕を掴んで来たので追いかける事は叶わなかった。
その腕を掴む手が震えている事に気づいて、携帯を鞄に突っ込んで茶髪の男の目の前に、しゃがんで服や頭に付いている埃や何やらを払って、ポケットからハンカチを取り出して茶髪の男に差し出した。
「大丈夫ですか? 俺ので悪いけど取り敢えずハンカチ使って鼻押さえた方がいいですよ」
「…………はい。ありがとうございます」
茶髪の男は、ハンカチを受け取って弱々しく返事をすると、ゆっくり顔をあげて此方をみた。
俺は、その顔を誰よりも良く知っていて体が動かせなくなった。
それは、茶髪の男も一緒だったようでハンカチを地面に落とし目を見開いている。
暫く、お互い声も出せずに固まっていたが先に沈黙を破ったのは茶髪の男だった。
「……しゅういち……ろう?」
「……かな……で? ……なんで……」
茶髪の男は、俺の高校以来連絡を取っていなかった親友【藤堂 奏】だった。顔面を腫らし鼻血をポタポタと垂らしながら、此方を見つめる奏は俺の知っている高校時代の面影とはかけ離れていて何も言えなくなった。
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