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後日、洋食屋にて。
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旭は、駅の改札口でその時を待っていた。
今日は椎名と洋食屋に行く約束をした日。この日をどんなに待ち望んでいたことか。この日のために、学校もバイトも頑張ったし、数日前から服を全部引っ張り出して一番お洒落だと思うのを選んだ。だから家族には「彼女でも出来たの!?」と驚かれて、最終的には涙を流すほどに瀬野家に感動を呼んでいた。そのあと、友達だと旭が何度も言い聞かせたけれど。
椎名からは、仕事が終わって今駅に向かってるという連絡が先程入っている。
もうすぐ会えるな。旭はそのメッセージを見て、頬を弛めていた。
そして、画面を動かして、今までの会話を読み返してみたり。椎名は意外にも顔文字を使ったり、スタンプを送ってきたり、お茶目なところがあるということを知った。ギャップ萌えとはこういうことである。可愛い……なんてニヨニヨしていると、駅に着いたよと連絡がくる。
ドキドキ。改札口から出てくる人を見ていると、椎名らしき人が見えて、心が揺さぶられた。椎名はスーツにトレンチコートを羽織っていて、濃いめの青縁眼鏡をかけていた。
(うう、椎名さん、かっこいいよう……!)
心の中で叫ぶと、椎名も旭のほうへ気づいたようで手を振ってくれる。
「旭くん、お待たせ」
「し、椎名さん、こんばんはっ」
「こんばんは。ちょっと緊張してる?」
椎名は背を曲げて、ぐっと旭の顔へ近づいてくる。そして、こてんと首を傾げるのが可愛らしい。
「うあっ、はい……あの、椎名さん。今日は眼鏡なんですね」
「ああ……うん。仕事で使ってて、普段は裸眼で十分なんだけどね。早く会いたくて急いでたから、すっかり外すの忘れてたよ」
「あ! そのままでいてください!」
眼鏡を外そうとする椎名を旭は思わず止めていた。前とは印象が違って、これはこれでずっと眺めていたいくらいに好きだ。ちょっとだけ椎名と一緒に仕事をするという妄想も膨らむ。
しかし、もしかして恥ずかしいことを言ってしまったのではとハッとすると、椎名が口元を隠していた。これは笑われてる。完全にその手の下は笑っている。そして、視線がばっちりと合うと、椎名はニコリと爽やかな笑みを浮かべた。
「旭くん、こういうの好き?」
旭は口ごもる。
「ねえ、旭くん。好き?」
すると、椎名が重ねて聞いてきて催促させられた。
チラリと椎名を見ると、ふわっと微笑んで旭の回答を待っている。答えなんてわかっているくせに。余裕のある大人はずるい。でも──。
「す、好きです……」
このことは変わらない。今日も久しぶりに会えて、好きという気持ちに溢れかえっているのも事実。結局、旭は顔を真っ赤に染めながら答えたのだった。
それから、満足した様子の椎名に連れられて、洋食屋に到着する。
車が一台通れるかくらいの狭い路地にあったこのお店は、外観が普通の家と間違えるほどで、地元の人が知っている穴場スポットというような場所だ。中に入れば、レトロな雰囲気が広がって、いわゆる純喫茶のような内装だった。
案内された席に座り、手作り感のあるメニューを広げると、
「わあ、すごい……」
いきなり豪華な盛り合わせの写真が、ドンと載せられていた。『ビーフ・チキン・ポークソテースペシャルセット』という、肉好きの人にとってはとても魅力的かつ、わかりやすいメニュー名。値段は割高なものの、載っている写真のものはとても美味しそうだ。
最初のインパクトに圧倒されて、そのページをずっと開いていると、椎名が声をかけてきて。
「美味しそうだね。俺、それにしようかな」
「まだ一ページ目ですよ……?」
「あは、そうだね。でも、それなら全部網羅した気分にならない?」
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