アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
とろける、
-
ひたすらに想いを寄せていた椎名がついに恋人になった。
変わったことといえば、たくさんある。まずは好きと言うようになったし、聞くようになったこと。勿論、恋人としての“好き”である。
特に椎名は夜に電話をした時に、おやすみの挨拶と一緒に言ってきて。電話越しなのが切なくもあるし、でも、耳へダイレクトに伝わるし、どうしようもない気持ちになる。そのせいで何度か携帯を落としてしまって、椎名から心配されながらも「少しずつ慣れようね」と笑われるのが定番になりつつあった。
あとは、さり気なく触れ合うようになったこと。指先が触れ合えば、気づかれないところでほんの一瞬だけ手を繋いだり、人気がなくなったらこっそりキスをしたり。イケナイことをしているような、我慢をしたあとでやっと触れられることにドキドキした。
会うだけでもいいからと気軽に会えるようになったし、優しくて甘い蜜月を満喫中だ。そして、片想いの時期もドキドキしていたのに、さらにまた違ったものが増して、旭の中ではいつでもドキドキ警報が発令中である。
お互いに次の日の休日を狙って、辿り着いたその日。
夕食を済ませたあと、デートがてら港の夜景を見てホテルへとやってきた。次の日の休日を狙ったというのは、そういうことである。
「ようやく旭くんに触れる」
「わっ、椎名さん……」
ホテルの一室に入ると、後ろから腕が回ってきた。休みが合うまでがっつりとした触れ合いはなかったので、ぎゅっと強く抱き締める腕に旭の心臓が跳ねる。
「名前ね」
「っ、京介さん……」
声も吐息を感じるくらいに近くて、そんなたいしたことを言われていないのに、いやらしく感じた。
「こっちを向いて?」
すると、椎名の腕が緩んで、旭は椎名と向き合う形になった。
椎名の顔を見上げてみれば、いつもの優しい微笑みをくれて。駄目、かっこいい。言うまでもなく、旭の心はきゅんと鳴る。
そのせいで我慢が出来なくなってしまい、旭自ら、椎名へと抱きついた。後ろから抱き締められるのはドキッとするが、やっぱりこっちのほうが落ち着いて好きだ。匂いも鼓動も感じられて、一番大きいポイントは自分も抱き締められるところである。
存分に抱き締め合ったあとは、椎名に手を引かれつつ、二人仲良くベッドへ転がり込んだ。今回は、椎名の上に旭が乗る体勢となって新鮮な感覚だった。
旭は両手で椎名の顔を包み込み、唇を重ねる。しかし、しばらくただ唇を重ねたままでいて、旭に違和感が押し寄せてくる。口づけに味気がないのだ。いつもは椎名がリードしていてくれるし、キスってどうしたらいいのだろう。ひとまず、これは気持ち良いキスではない。
眉を寄せ、唇を離すと、椎名がふふっと笑い声を上げた。そこで、椎名の企みに引っかかったのだと気づいた。
「いじわる……」
「んー、ごめんごめん。旭くんはどういうキスをするかなって思って」
これでは経験なしで下手なのが丸分かりだ。元からそのことを椎名には知られているけれども……。
「……もうキスしない」
「しなくていいの?」
「……」
それは、いや。
少し睨みがちに椎名を見る。
「言った割には、めちゃくちゃ欲しそうな目をするね。……駄目、俺が我慢出来ない」
旭の後頭部に椎名の手があたると、ぐいっと引き寄せられた。
再び唇が重なり、キスをする。今度はちゃんと椎名が唇を啄んでくれて、旭は鼻から抜けるような声を漏らした。唇が痺れそうなほど、啄んだり、時折、唇を噛んだり甘酸っぱい口づけを幾度となく交わして、最後にリップ音が鳴る。
口づけが終わり、椎名は旭の濡れた唇を親指でなぞりながら言った。
「そういえばさ、次は旭くんをとろとろになるまで気持ち良くさせてあげる……だっけ?」
咄嗟に旭は椎名の胸板を押し、ばっと上体を起こした。頬はみるみるうちに染まっていく。
「あ、その反応はちゃんと覚えてるね」
「京介さんこそ」
仕方ない。旭は“それ”を期待してたのだから。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
28 / 76