アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
【番外編】金と黒 30
-
仲間で集まる日の夜。
明は、集合前に凛と会うことにした。健人もついてきている。変なことをしたら止めてね、と伝えると、健人は大丈夫としか言わなかった。そこまでの自信があるのはなぜだろう。考えすぎるのが駄目なのだろうか。不安になりつつ、明は健人の大丈夫を言い聞かせる。
肌寒い夜道。その寒さが明の緊張を高めた。そして、ついに凛の姿が見えて。
「明さん……!」
凛の顔は、嬉しそうに微笑んでいる。凛に手をあげてしまったのに。明の脳裏に、その時の光景がフラッシュバックした。
小走りで近づいてくる凛に明が身体を固くしていると、トンと健人に軽く背中を押されて。振り向けば、健人が「いってこい」と笑う。明は小さく頷き、凛を迎えた。
「良かった……戻ってきてくれたんですね!」
大きな瞳には涙が浮かんでいる。それよりも、点々と凛の頬に残っている内出血のような痣に明は心を痛めた。
恐る恐る手を伸ばし、触れようとするが手が震えてしまう。一度、息を吐いて落ち着かせてから、ようやく指先が凛の頬に触れた。明はそのまま指先で撫でながら口を割る。
「まだ痕が残ってるね……」
「あ、ああ……まだこんな感じですが、綺麗に治るみたいなので気にしないでください」
凛は怒ることも、悲しむこともなかった。笑って、気にしないでと言って。
泣きそうだったのは明のほうだった。
「ごめんね……俺、あの時はほんとにどうかしてた」
思ってたよりも、謝罪の言葉がすんなりと出た。しかし、謝罪だけで済まされるものではないと思う。嫉妬という醜いもので、凛に酷いことをした。この罪は明にとって大きい。
「謝るだけじゃ駄目だって思ってる……」
明は肩を下げる。すると、凛が慌ててぶんぶんと首を横に振って。
「そんな……! 俺、明さんに怒っているわけじゃないですし……むしろ俺のせいだと思ってるので、明さんが戻ってきてくれただけでも報われました」
凛を見ると、潤っていた瞳がキラキラと輝いている。頬もほんのり赤い。
そういえば、凛と話した時も凛はよく頬を染めていた。そして、明と繋がった時に泣いて嬉しいと言っていた。あの時には、すでに凛は明のことが好きで。凛のまっすぐな気持ちと比べると、冷ややかな対応をしていた自分が情けない。
凛のためにも、明は正直に話し始める。
「あの……凛の気持ちは健人から聞いてる。その上で話すのはどうかと思うんだけど、俺はずっと健人のことが好きで、そばにいる凛に嫉妬してた。今はそうじゃないけど、いつも健人に抱いてもらえる凛が憎かった。健人に好きっていうのも悟られないようにしてたし、ついカッとなってしまって……」
「それで健人さんとは……上手くいきましたか……?」
「……うん。これに関しても、ごめん……凛の気持ちを汲み取ることが出来なくて。凛には謝ることしか出来ないな……」
この明の謝罪には、凛は切なげな表情になった。だが、すぐに取り戻して明るい表情に変わる。
「悔しいけど、明さんの幸せが一番です!」
強い子だな。明はそう思う。だからこそ、自分には凛はもったいない。もっと良い人と幸せになって欲しい。それこそ祐馬みたいな良い人と。
凛は、ちらりと明から視線を外す。どうやら、後ろにいる健人を見ているようだった。少しの間、健人を見つめ、それから明に視線を戻すと、ふふっと笑った。
「でも、健人さん変わりましたね。あそこまでするなんて、明さん凄いです」
「どうだろ……凛も健人のこと叩いたんだって? 聞いて驚いた」
「はは……明さんのこと酷く言うのは許せませんでした」
「かっこいいじゃん」
えへへ、と笑う凛に明も頬を弛める。
凛の笑顔が眩しい。けれど、その笑顔に明は助けられた。最初の緊張が嘘みたいに穏やかな気持ちで。心持ち寒さも暖かく感じた。
「明さん。これからも俺とお話してくれますか?」
「ん。凛がよければ」
「はい! 明さん、ありがとうございます」
「え、なんで? 感謝されることないよ……むしろこっちがありがとうだし」
仲直りの印にと凛からの要望で握手を交わして軽くハグをすると、後ろで見ていた健人が合流する。
健人はというと、ちゃんと出来たじゃんと明の髪をわしゃわしゃ撫でてきて。それに凛が瞳を輝かせるものだから、明は恥ずかしくて仕方がなかった。
次は、仲間たちが集まるバーである。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
64 / 76