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泣いた夜
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「っくしょー!!俺が何したって言うんだよ!」
今日は23年間生きてて一番最悪な日かもしれない。
仕事帰り、公園のベンチに座り、缶ビールを煽る。
俺は3本目の缶のプルタブを開けると、一気に苦い汁を喉に流し込む。
辛い。
時刻は23時を回っていた。
今日は本当にさんざんだった。
先輩のミスを擦り付けられ、上司に怒られた揚げ句に尻拭いさせられこんな時間に。
彼女との約束を守れず、ドタキャン。
例の、私と仕事どっちが大事なのという恐ろしい言葉に、疲れていた俺は売り言葉に買い言葉。
もう別れよう。
そんなメッセージが携帯のメッセージアプリに表示されていた。
あー。
イライラと悲しみと、やるせなさ。
衝動的に何かを思いっきり殴ってしまいそうな自分を酒の力で押さえて。
「っあーーー!!!」
公園に人の気配がないのを良いことに思いっきり声を出す。
「おっさん、どうしたの?」
不意に横から声が聞こえてびっくりしてそっちを見ると少年が居た。
「なっ……幽霊?」
「おっさん、大丈夫かよ?幽霊なんか居るわけないじゃん。」
あ"?!
なんて生意気なガキ。
「泣いてんのかよ、おっさん。」
「おっさんおっさん言うなー!俺はまだ23だ!それに、泣いてないっ!」
ってかなんで小学生がこんなところに?
「23はおっさんだろ。」
「君からしたらおっさんかもしれないけど、まだおっさんじゃないの!」
「じゃ、名前で呼ぶから。教えて。」
何この子。
「隆臣。」
「ふぅん。隆臣、泣いてるなら俺が慰めてやるよ。」
「え。」
急に少年の顔が近づいてきて、唇が重なる。
「お、おい?」
「酒くさ。大人はこんなもん飲まないと泣きたいのまぎらわせれねぇんだな。」
ぐっ。
なんか心に刺さる。
「やっべ。母ちゃんが呼んでる。」
少年は立ち上がると公園の出口に向かって走り出した。
「泣きたくなったら俺に言えよ。慰めてやるから。」
あっという間に居なくなる。
なんだったんだ。
まるで嵐のような少年だった。
なんなら本当に幽霊だったんじゃないかと疑ってるくらいだ。
あーあ。
なんか気が削がれた。
さっきまでイライラしてたこともこれからどうしようとか悩んでた事も、なんかどうでもよくなった。
悔しいけど、あの少年のお蔭かな。
かーえろ。
俺はベンチから立ち上がると、公園の裏のマンションに向かって帰路を進めた。
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