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なぁ、お前の気になる奴って。
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翌日、朝はまたやってくる。
眠い体を引きずって出社する。
「おはよ。」
会社の前で沢木さんに声を掛けられる。
「おはようございます。」
あー。
朝一でこの人の顔をみるとちょっとげんなりする。
以前にくらべたら俺への当たりが格段によくなった。
それは認めよう。
しかし、あからさまな好き好きアピールに困っている。
「そんなあからさまに嫌そうな顔するなって。元気だしていこうぜ!」
バンっと背中を叩かれる。
「は、はぁ。」
それに加えてこの人は物凄くポジティブなのだ。
何度も付き合おうと言われて、その度に断っているのに、態度を変えようともせずに好き好きアピールをしてくる。
トボトボと会社の中に入る。
席につこうと椅子を引いた時に、沢木さんが俺に近づいてくるのが見えた。
「なぁ、今日、昼飯行こう。」
「え、えぇ。いいですけど。」
「じゃ、12時になったら外出てきて。俺、午前中、社外で打ち合わせだから。」
「はい、わかりました。」
「じゃよろしくなっ。」
と、また肩をばしっと叩かれる。
勢いにあっけにとられる。
あの人のあぁいうところが苦手でもあり、見習いたいところでもあり。
午前の業務を滞りなく終えて、ふと時計を見ると12時5分前だった。
そろそろ行くか。
と、空になったコーヒーのカップを手にして席を立つ。
「今日も沢木さんとご飯ですか。」
隣の席の社員が声をかけてくる。
「そうなんですよ。」
ちょっと困った風の声色をだしてそう答える。
「最近、沢木さんの態度があからさまに変わりましたよね。藤さん、何かしたんですか?」
そう言われてちょっとドキッとする。
「そうですよね。一体どうしちゃったんでしょうね。」
ははは、と乾いた笑いを残してその場を立ち去る。
なんで態度が変わったかと言うと、何故か沢木さんが俺の事を好きだと自覚してしまって、俺に猛アピールしているからだ。
などと、言えるはずもなく。
給湯室でカップを洗ってから、そのまま会社を出る。
「よぉ。」
会社を出ると、エントランスの正面で沢木さんが待っていた。
「いつものとこ、行こうぜ。」
「はい。」
先に立って歩き出して沢木さんに続いていく。
いつものところ。
最近、沢木さんと昼に出ると会社近くの安くて量の多い定食屋に行くのが定番になっていた。
「いらっしゃいませー。」
店のドアを開けると、店員が元気に挨拶をしてくれる。
「2人ね。」
「はい、こちらへどうぞー。」
まだそんなに混んでいなかったのですんなりはいれた。
店員の持ってきてくれたおしぼりで手をふく。
「なぁ。昨日、さ。」
「はい?」
おしぼりを置いて、出されたお茶をすする。
「電車でお前の事見かけたんだけど。」
さぁっと血の気が引いて、心臓がドキドキしてくる。
昨日って。
「へ、へぇ。他人の空似じゃないんですか?」
「俺がお前の事、見間違える筈がない!」
という謎の断言に気圧される。
「お前が前に気になる奴居るって言ってたけど、あれって、一緒に居た高校生くらいの子?」
あぁ。
見られてた。
しかも一番やっかいな人に。
「あ、あれは親戚の子で。」
冷や汗が流れてくる。
「そうか?なんかお前の雰囲気がそれっぽかったていうか。あからさまにあいつに惚れてますって顔してたから。妬けた。」
お、俺、そんな顔してたのか。
だとしたら、俺は人前でどんな顔して諒太君とデートしてたんだろう。
「な、そうだろ。お前、男もいけたんだな。さしずめ、未成年だから付き合えないってとこか?」
「や、それはっ。」
声がかすれる。
「だとしたら、あいつより俺の方がお前の恋人に適任じゃね?」
「な、」
「俺なら今すぐに付き合える。キスもエッチもできるぜ。」
「えっ…!?」
かーっと顔が熱くなる。
そんなはっきりと言葉にしないでくれっ。
「お待たせしましたー。」
注文した定食が運ばれてくる。
「ほ、ほらきましたよ。食べましょ。」
冷や汗が止まらない。
それにえもいわれぬ不安が俺の心の中を渦巻いていた。
昼飯の味は全然わからなかった。
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